実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

新型コロナ 感染症を診る病院は「もっと検査を」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 今回はお正月特別連載の2回目です。前回は、日本の新型コロナウイルス対策として最もまずかったのが、新型コロナの検査数を少なく抑えてきたことだと述べました。実際、PCR検査の供給は、2020年春の時点ではまったく需要に追い付いていませんでした。現在は検査不足が解消されているのでしょうか。

 これには地域差があります。私の知る限り、最も検査の状況が充実しているのが東京です。東京ではPCR検査を希望すれば(どこで実施するかは別にして)「どこに行っても受けられない」ということはもはやほぼありません。春には検査が遅れて死亡した事例が東京にもあったわけですから(参考:「新型コロナで孤独死した友人に捧ぐ(上)」)、状況は大きく改善したと言えるでしょう。

地方ではまだ不十分なPCR検査の供給

 ただし地方では必ずしも充実しているとは言えませんし、大都市でも、例えば私が住む大阪では検査の供給が需要に追い付いていません。

 医療機関の中で検査をする際には、新型コロナが疑われる患者さんを他の患者さんに近づけてはいけませんから、検査を受ける人を時間的または空間的に隔離することが必要になります。太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)のようにビル内にあるクリニックでは空間的隔離はできませんから時間的隔離をするしかありません。つまり他の患者さん全員が帰ってから来てもらうことになり、1日に診られる人数は限られます。

 そのような事情から谷口医院では「発熱外来」の対象者を「谷口医院をかかりつけ医にしている人」のみとしています。しかし、わらにもすがる思いで「他院から断られた。なんとかしてほしい」と電話をしてくる患者さんは少なくありません。また、「症状はないけれど濃厚接触だと思う。保健所には断られた」という相談もあります。つまり「検査を受けたいけれど受けられない」という人は今も多数いるのです。

 こうした検査不足が「需要に応えられていない」だけでは済まず、感染の拡大にもつながりかねないことは、前回述べた通りです。

医師不在の検査や郵送検査も

 一方、供給側にもさまざまなタイプが出てきました。以前は、検査を受ける場所は保健所管轄の検査会場か、谷口医院のような医療機関しかありませんでした。今は新型コロナのPCR検査を専門にするクリニックが全国で相次いで登場し、なかには美容系クリニックが運営するところもあります。テレビで検査のCMを流す医療機関も出てきました。さらに、医師が介在しない検査機関や、検査を受ける人が自分で採取した検体を、郵送させて受け付ける検査機関も出てきました。過去のコラム「新型コロナ 自己検査PCR『安易に受けないで』」でも紹介したように、感染を知られたくないという心理につけこんで「こっそり検査」をうたっているところすらあります。

 ここまでをまとめると、東京以外の多くの地域では「検査を受けたくても受けられない人」が依然多く、しかしその一方では、従来とは異なるタイプの医療機関や検査会社が増えてきているというのが現在の状況です。私は、いずれ供給が需要に追い付くだろうとみています。

検査を受けるべき場合と場所

 では、どのような人がどのような場所で検査を受…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。