医療プレミア特集

「多死社会」 コロナ禍での教訓

医療プレミア編集部
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在宅診療医の小澤竹俊氏=めぐみ在宅クリニック提供
在宅診療医の小澤竹俊氏=めぐみ在宅クリニック提供

 新型コロナウイルス感染症の流行で、私たちは「死」を意識する機会が増えた。高齢者や基礎疾患のある人は感染で亡くなるリスクが高いほか、病院では感染防止のため、肉親のみとりに立ち会えない状況も生まれた。一方で、高齢化が加速し「多死社会」を迎える私たちが、コロナから得られる教訓はないか。ホスピス医や在宅診療医として、これまでに3500人以上をみとってきた小澤竹俊氏(57)に聞いた。【聞き手 くらし医療部・熊谷豪】

 ――コロナで私たちは死を意識する機会が増えたでしょうか。

 ◆「第1波」では欧州を中心に医療崩壊が起きた。従来は発熱や呼吸状態の悪化があれば救急車で搬送されて入院できていたのに、入院もできないまま最期を迎えたという報告があった。第3波にある日本でも、コロナで亡くなる人は増えてきている。高齢者が感染すると亡くなる可能性は高い。自身や家族が高齢の場合、「コロナにかかって死ぬのではないか」と不安を覚える人は多いのではないか。死を意識する機会は増えたと思う。

コロナが収束したとしても…

 ――日本はこれから「多死社会」を迎えると言われていた。

 ◆これまで私たちは病気にかかったり交通事故に遭ったりしても、病院に最善を尽くしてもらえた。ところがコロナのように重度の肺炎にかかる人が急速に増えると、病院で当たり前だった治療を受けられない医療崩壊が起きると懸念されている。コロナについてはあと1、2年すれば、ワクチン開発などで収束に向かっていくとの予測がある。しかし、このままでは同様のことが、高齢者が急増する日本で起きるのではないか。つまり、介護を必要とする人や、病気で救急搬送される人は増えていくためだ。医療崩壊が迫っている現在の状況は、10年後、20年後の日本の姿を先取りしたものではないか。限られた社会保障費と人材で、多くの方が亡くなっていくのにどう対応するかが、大きな課題だ。

 ――「エンドオブライフ・ケア協会」を立ち上げたのは、どういった狙いですか。

 ◆これまでのホスピス医としての経験から、日本はこれから多死社会を迎えようとするのに、みとりをする準備が社会で整っていないと気づいた。「人生の最終段階」(終末期)に関わる人を増やそうと、2015年に協会を有志で立ち上げた。研修は実践的だ。例えば、「なんで私がこんな病気にならなければならないのか」と患者に問われた時に、どう返事をするか。ロールプレーで援助のあり方を学ぶ。担い手は、医師や看護師、薬剤師などの医療者や介護者だけでなく、苦しむ人の力になろうとする人なら資格がなくてもいい。民生委員、消防団、保護司など、それぞれの立場で関わる担い手を地域で増やしたい。

進まない在…

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