実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

新型コロナ 「脅威派」と「軽症派」は学び合って

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 新型コロナウイルスの勢いが止まらない一方で「新型コロナはインフルエンザと同じ程度の風邪だ」という意見も依然根強くあります。こういった意見の人たちは緊急事態宣言どころか、飲食店の時短などの自粛にも反対し「経済を回せ」と言います。同じ現象をみているはずなのに、なぜこれほどまでに意見が異なるのでしょうか。過去に紹介したように新型コロナを軽症と考える「コロナ軽症論」には説得力があるものもあります。その一方で、新型コロナがインフルエンザよりも脅威であることを数字で示した論文も登場してきました。そこで今回は、改めて「新型コロナとインフルエンザの違い」について考えてみたいと思います。

米仏両国から出た「インフルとの比較」論文

 まずは最近相次いで発表された二つの論文を紹介します。一つは医学誌「British Medical Journal」2020年12月15日号に掲載された米国からの論文「新型コロナと季節性インフルエンザ、入院患者の臨床症状と死亡リスクの比較研究」。もう一つは医学誌「The Lancet Respiratory Medicine」20年12月17日号に載ったフランスからの論文の「新型コロナと季節性インフルエンザの特徴、罹患(りかん)率、死亡率の比較」です。

 米国の論文で述べられている新型コロナとインフルエンザの比較をみてみましょう。新型コロナで20年2月1日から6月17日までに米国で入院した患者3641人と、インフルエンザで17年から19年までに入院した患者1万2676人を比べた結果です。新型コロナでは、脳卒中、急性心筋炎、不整脈及び心臓突然死を起こすリスクがそれぞれ、インフルエンザの1.62倍、7.82倍、1.76倍と有意に高い結果が出ました、急性腎障害は1.52倍、敗血症性ショックは4.04倍と全身に障害が起こりやすいことが示されています。また、死亡リスクはインフルエンザの4.97倍、人工呼吸器使用は4.01倍、集中治療室入室は2.41倍でした。

 フランスの論文は、20年3、4月にフランスで入院した新型コロナ患者8万9530人のデータと、18年12月から19年2月にかけて入院したインフルエンザ患者4万5819人のデータを比べたものです。この論文では、新型コロナの院内死亡率はインフルエンザの2.9倍とされています。この論文で興味深いのは小児のデータです。たしかに、新型コロナの入院患者はインフルエンザより少ないものの、5歳未満で集中治療を要した新型コロナの小児はインフルエンザよりも多かったのです。また、青年期(11~17歳)では、新型コロナの院内死亡率はインフルエンザよりも10倍も高かったというのです(ただし、入院患者に占める18歳未満の患者の比率は、新型コロナの場合は1.4%で、インフルエンザの19.5%より大幅に少なくなっていま…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。