ボストン発 ウェルエイジング実践術

新型コロナ 脳に影響し「せん妄」や後遺症

大西睦子・内科医
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 当初、呼吸器疾患と考えられていた新型コロナウイルス感染症。世界中に広がり始めて1年が経過し、呼吸器以外にも、さまざまな影響が出ることがあると分かってきました。今回はその中で、特に脳に関わる影響についてご紹介します。

 米マサチューセッツ州ボストン医療センターのソンドラ・クロスビー医師は、自身が新型コロナウイルスに感染した際の経験を、英科学誌「ネイチャー」に語りました。

新型コロナにかかった医師の体験

 ボストンで新型コロナウイルスが流行し始めたとき、クロスビー医師は感染者の治療に携わりました。ですから、昨年4月に気分が悪くなり、自分が感染したことに気づいても驚きませんでした。はじめはひどい風邪のように感じましたが、翌日には体調が悪化しベッドから起き上がれませんでした。食べるのに苦労し、夫にスポーツドリンクと解熱薬を持ってくるように頼みました。

 それから時間の経過が分からなくなりました。5日間、もうろうと混乱して横たわっていました。電話の電源を入れる方法や住所など、単純なことが思い出せませんでした。そのうち幻覚が始まり、壁にトカゲが見えたり、爬虫類(はちゅうるい)の嫌なにおいを嗅いだりしました。後になってようやく、自分が「せん妄」を起こしていたことに気づいたのだそうです。

せん妄を通常より起こしやすい

 せん妄は、突然にあらわれる重度の見当識障害で、幻覚や錯覚、妄想に陥ることがあります。入院している患者にしばしばみられる症状です。2015年に英国医師会雑誌に掲載されたメタ解析(多数の研究をまとめて分析する手法)によると、重症患者の31.8%がせん妄を発症していました。

 ただし、新型コロナウイルスで入院中の患者(特に高齢…

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大西睦子

内科医

おおにし・むつこ 内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。