賢い患者

オンライン診療 向かない場合は対面診療で

山口育子・認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」理事長
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 新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年がたとうとしています。この間、さまざまな対策が講じられたなかで、私が気にしているのが「オンライン診療」や「電話診療」のあり方です。もちろん、オンライン診療の良さは認め、有効に利用していく必要はあると思っています。ただ、「オンライン診療に向かない場合は、しっかり対面診療をしてほしい」ということです。たとえば、発熱でオンライン診療を受けて、新型コロナ感染が疑われても、オンラインでは検査ができませんから、診断を確定させることができません。従来、オンライン診療には「初診はオンラインでなく、対面で診療する」というルールがありました。それが昨年4月から時限的措置として緩和されました。それに伴い国は初診でオンライン診療をおこなう場合のルールを作りましたが、それでも私は危険を伴う場合があると感じています。この問題は以前も少し書きましたが、今回はあらためて詳しく考えたいと思います。まずは、オンライン診療が現在の形になった経緯を説明します。

昨年4月の緊急検討会

 2020年4月2日午後6時半から、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が、オンライン会議として開催されました。私も構成員の一人としてオンラインで出席しました。

 検討会の開催通知が届いたのは、2日前の3月31日。緊急の開催でした。内閣府の規制改革推進会議のタスクフォース(4月2日の午前中に初会合を開催)が、オンライン診療の規制緩和を強く求めてきたためです。同会議は「新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためのオンライン・電話による診療・服薬指導の活用について」と題した資料を出し「初診対面原則の見直し」「診療報酬上の取り扱いの見直し」などを要請したのです。

 オンライン診療については、18年4月に「オンライン診療料」が保険診療として新しく認められるにあたり、保険の内外問わず適用されるオンライン診療の指針(ガイドライン)が作成されました。「指針の見直しに関する検討会」は、オンライン診療のガイドラインを作った検討会を引き継ぐ形で、ガイドラインの見直しを定期的に行ってきました。

原則をどれだけ緩めるか

 そうした中で、新型コロナウイルスの感染が拡大し、オンライン診療に関するルールの基本である「初診は原則対面」を、どれだけ緩めるかが議論になりました。

 これについて検討会は、20年3月11日の会議で一定の方向性を出していました…

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山口育子

認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」理事長

やまぐち・いくこ 1965年、大阪市出身。89年大阪教育大卒業。92年秋から「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」のスタッフとして、患者からの医療に関する電話相談を受け、COMLの活動全般の運営に携わってきた。2002年から同専務理事兼事務局長、11年から理事長。著書に「賢い患者」(岩波書店、2018)