理由を探る認知症ケア

Oさんが同じ話を繰り返すのは…

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
  • 文字
  • 印刷
 
 

 Oさん(70代・女性)は、夫婦共働きで3人の子どもを大学に通わせ、それぞれ社会人として自立するまでに育て上げました。50代前半に長女が結婚し、初孫が生まれ、「若いおばあちゃんだね」とご近所さんからも祝福されたそうです。

 夫が定年退職してからは、Oさんもパートの仕事を少し減らして、夫と旅行に出かけたり、スポーツジムに通ったりして、充実した日々を過ごしていました。ところが、50代から高血圧や高脂血症を持病として抱えていた夫が、自宅で入浴中に意識を失い、突然、亡くなってしまいました。

突然、1人暮らしになったOさん

 Oさんは、心にぽっかりと穴が開いたようになり、元気をなくしてしまいました。心配したお子さんたちは、朝と夜には電話をかけてその日の様子を聞いたり、休みの日は孫を連れて遊びに行ったりして、これまで以上にコミュニケーションをとるようにしていました。

 時間の経過とともに、少しずつ元気を取り戻してきたOさん。しかし、長女は気になることがありました。日常の生活は問題なく過ごせているのですが、どうも同じ話を繰り返すことが多いような気がしていたのです。

 「A(長男)が小学生の頃、ここの公園に朝からセミを捕まえにきてたわ。お母さんは虫が嫌いだから、虫かごいっぱいのセミを見るだけでも気持ち悪かったわ」

 「むかし、ご近所のBさんには、あなたたちの面倒をよく見てもらってね。あなたが小さい頃に迷子になって大騒ぎしていた時に、Bさんがこのあたりでばったり会って連れて帰ってきてくれたのよ」

 こうした思い出話をしてくることがあり、長女が「それ、前も聞いたよ」と伝えても、「そうだった?」と覚えていないという反応だったので、「もしかして認知症なのかしら……」と長女は心配になっていました。

「もの忘れ外来」で診てもらうことに

 長女は、Oさんに「最近、お母さん、同じ話をすることがあって、前に話したことも覚えていないっていうでしょ? わたし心配しているの」と伝え、「一度、『もの忘れ外来』で診てもらわない?」と提案しました。

 Oさんは、最初は「大丈夫よ。あなたの顔も名前もわかってるし、家のことだってできているんだから」と言っていました。それでも、…

この記事は有料記事です。

残り1236文字(全文2155文字)

ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。