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触れられたくない過去

青山さくら・児童相談支援専門職員
 
 

 児童相談所の廊下ですれ違った女性。「あ、Fちゃん!」。私はすぐわかったが、彼女は私を無視するように足早に去っていった。Fちゃんはママになっていた。

 担当の福祉司によると、Fちゃんの3歳になる娘が保育園で「ママがおなか、けった」と言ったので、娘を一時保護したという。Fちゃんは20歳で妊娠し結婚。21歳で出産したがすぐ離婚し、24歳になっていた。再婚相手の夫Bは21歳、水道配管工だが「今は失業中」らしい。Fちゃんは「蹴ってない。ごはんをつくっていた時、抱っこしてと寄ってきた娘に足が当たっただけ」と言い、Bも「おれら、虐待なんかしてねえし。かわいがってるしよお」と言い張ったらしい。

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児童相談支援専門職員

「青山さくら」はペンネーム。複数の児童相談所で児童福祉司として勤務した後退職し、現在は自治体などで子ども虐待関連の仕事をしている。「ジソウのお仕事」は隔月刊誌「くらしと教育をつなぐWe」(フェミックス)で2009年4月から連載。過去の連載の一部に、川松亮・明星大学常勤教授の解説を加えた「ジソウのお仕事―50の物語(ショートストーリー)で考える子ども虐待と児童相談所」(フェミックス)を20年1月刊行。【データ改訂版】を2021年3月に発行した。絵・中畝治子