医療プレミア特集

性暴力と闘うムクウェゲ医師が伝えたいこと

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
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「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」の一場面=TBS提供
「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」の一場面=TBS提供

 「女性にとって世界最悪の場所」といわれるアフリカ中部のコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)では1996年以降、40万人以上の女性が武装勢力による性暴力の被害にあっている。2018年にノーベル平和賞を受賞した産婦人科医のデニ・ムクウェゲさん(66)はこの地で、生後6カ月から91歳の被害女性5万5000人以上を無償で治療し、社会復帰を支援してきた。「先生のお人柄に圧倒されました」。世界に向け「武器としての性暴力」の現状と国際協力を訴えるムクウェゲさんを映像で捉えたドキュメンタリー「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」の監督でTBSプロデューサーの立山芽以子さん(47)は語った。【西田佐保子】

初めて治療したのは性暴力の被害者

 ムクウェゲさんの活動をアフリカ研究者の友人から聞いて興味を持ち、16年にムクウェゲさんが初来日したときから取材をはじめたという立山さん。18年にはコンゴに足を運び、19年に再来日した際もその姿をカメラで追った。その後、リモートでインタビューを行い完成させた作品が、「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」だ。

 「過酷な状況の中で生きているのに、とてもやさしくて、穏やかであたたかい。ムクウェゲ先生の口から実際に話を聞くことで、コンゴで起きている問題についてより深く考えさせられました」

 ムクウェゲさんは、出産で命を落とす女性を助けたいとの思いで産婦人科医を志す。しかし、99年にコンゴ東部の町、ブカブにパンジ病院を設立して初めて治療したのは、性暴力にあった女性だった。さらに、レイプにより妊娠し診察したことのある女性の子どもが成長し、その子がレイプされて病院に運ばれてきたとき、「根本的な問題を解決しなければ、永遠に女性の治療を繰り返さなくてはならない」と気付く。

 12年9月、ムクウェゲさんは国際連合で演説を行い、コンゴにおける性暴力の実態を報告。18年には一連の活動が認められ、ノーベル平和賞を受賞した。現在も後進を育てつつ、自ら治療に当たり、世界各地で講演も行う。

 ムクウェゲさんは1日2食で働き詰めだったと話す立山さん。「『先生、働きすぎですよ』と言うと、『日本人ほど働かないから大丈夫』と返されました」

武装勢力による性暴力の目的

 コンゴで繰り返されるのは、男性が性欲を満たすための性暴力ではなく、「支配するためのレイプ」だという。映画では、性暴力にあった被害女性らが精神科…

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西田佐保子

毎日新聞 医療プレミア編集部

にしだ・さほこ 1974年東京生まれ。 2014年11月、デジタルメディア局に配属。20年12月より現職。興味のあるテーマ:認知症、予防医療、ターミナルケア。