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コロナ対策 「産学官共同で基盤整備を」 大曲貴夫医師講演

医療プレミア編集部
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第11回NCGM国際感染症フォーラムで講演した大曲貴夫・国立国際医療研究センター国際感染症センター長=同センター提供
第11回NCGM国際感染症フォーラムで講演した大曲貴夫・国立国際医療研究センター国際感染症センター長=同センター提供

 国内で新型コロナウイルス感染症が確認されてから1年が過ぎた。最前線で治療を続け、治療薬の国際共同治験にも携わった大曲貴夫・国立国際医療研究センター(NCGM)国際感染症センター長が、オンラインで開かれた第11回NCGM国際感染症フォーラムで講演した内容をまとめた。【くらし医療部・御園生枝里】

 私はこの1年間、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の臨床の対応と研究をやってきたが、我々の経験と課題を紹介したい。

 私は5年前に厚生労働省の研究班でMERS(中東呼吸器症候群)の対策を2年間やっていた。その成果と課題をまとめた中に、治療のガイドラインがある。内容は、抗ウイルス薬の使用に関して当時の知見をまとめたガイドライン▽患者レジストリ(登録)を行うためのCRF(症例登録票)の整理▽回復者血漿(けっしょう)の基盤整備、課題抽出――が書いてある。

 こうした準備のおかげで2020年1月からのCOVID-19対応の一歩目がなんとか踏み出せた。要は準備が必要ということ。当時、抽出された課題で注目いただきたいのは、非承認薬、未承認薬を使うための医師主導治験あるいは臨床試験を迅速に行うための枠組みを作っておく必要があるということだ。課題としては投げていた。実際に1年前から我々が対峙(たいじ)した課題で、実行する時に非常に苦労したところだ。

 他にも課題を挙げていた。例えば、保健所での濃厚接触者の調査のためのリソースを整備しておく▽感染症対策のための公衆衛生目的での情報収集の体制強化の必要性。これ以外にもいくつも課題はあるが、実はこれらの課題は私たちが新規に挙げた課題ではなく、09年の新型インフルエンザ以降ずっと挙げられていたことだった。

有事の今だから変えられる

 こういう課題は、平時にはなかなか解決しない。本来は平時に解決すべきことだが、なかなか解決しない。強く申し上げたいのは今の有事だからこそ、これらのバリアーは壊せる。今こそこれらを全部変えていく必要がある。

 実際にどんな準備をやってきたかを紹介したい。14年、エボラ(出血熱)が世界中を席巻していて、その疑い患者をNCGMで対応した。日本では陽性例はなかったが、実際に対応していく中で、諸外国の様子をみていくと、患者を当然助ける必要があるが、そのために集中治療の設備をはじめとした準備が必要だと分かった。

 まずは我々の病棟を変えようと、準備を始めた。15年だったと思うが、スウェーデンのリンショーピン大学に行った。感染症病棟は一見ちょっと古めかしい感じだが、部屋がものすごく大きい。おそらく日本の4人部屋から6人部屋を1人で使っている状況。広いスペースをとることで、複数の治療機器を入れることができる。人工呼吸器や透析の機械、ECMO(エクモ、人工心肺装置)の機械。これくらいの広さの部屋が必要で、準備がいるということを学んだ。それらを意見書としてまとめて、最終的には予算を確保して我々の病棟を改築した。改築された部屋は、実際に新型コロナの重症患者の診療に使われることになった。やはり準備が必要だ。あの時、苦労しながら、つてもないままスウェーデンまで押しかけて、見学したのは無駄ではなかった。

 実際に新型コロナの患者を診る時、…

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