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「身体拘束」 日本はなぜ多いのか

医療プレミア編集部
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インタビューに応じる長谷川利夫・杏林大教授=東京都内で2021年1月13日、岩崎歩撮影
インタビューに応じる長谷川利夫・杏林大教授=東京都内で2021年1月13日、岩崎歩撮影

 国内の精神科病院では、統合失調症など精神疾患のある患者らの長期入院や、患者の手足をベッドなどに固定する「身体拘束」が常態化している。米国など他の先進国と比べて実施率が高いことが指摘される。国内の精神医療にはどんな問題があるのか。身体拘束の問題に詳しい長谷川利夫・杏林大教授(精神医療)に聞いた。【聞き手 科学環境部・岩崎歩】

 ――精神医療での身体拘束とはどういう行為ですか。

 ◆医師の指示により看護師らが専用の拘束器具などを使用して、患者の行動を制限する行為です。例えば、「5点拘束」といって、腹部、左右の手首と足首をそれぞれベッドにくくりつける方法があります。日本では、精神保健福祉法で、患者の行動制限に関する権限を持つ精神保健指定医が、今すぐに自分自身を傷つけてしまうような状態と判断した場合などに身体拘束を認めており、本来限定的に行われるものです。

突出して高い日本の身体拘束の割合

 ――身体拘束の国別の実施率を分析し、英精神医学誌「エピデミオロジー・アンド・サイキアトリック・サイエンシズ」に論文を発表しました。

 ◆人口100万人当たりで1日平均何人が身体拘束されているか、日本、米国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国について、2017年のデータを基に分析しました。その結果、日本はほかの3カ国に比べて、100万人当たりで身体拘束を受けている人数が約270~約2000倍にも上りました。

 身体拘束は、患者が落ち着ける環境を整備するなど代替手段が見つかるまでのやむを得ない処置でなければいけません。しかし、現実は安易に漫然と身体拘束をしていることも多く見受けられます。厚生労働省の「精神保健福祉資料」によると、全国の精神科病床で精神保健指定医が身体拘束を指示した入院患者は、19年6月末時点は1万875人で、15年前の04年(5242人、当時は身体拘束の実施数を集計)の2倍以上になりました。

 ――一度身体拘束をされるとなかなか解除されない人が多いと聞きます。

 ◆全国11の精神科病院で身体拘束を受けていた245人を対象に継続実施日数を調べたところ、平均96.2日(15年8月時点)で、最も長い人は約3年(1096日)にも及んでいました。1カ月を超える人が104人と全体の42%で、継続日数は諸外国に比べても圧倒的に長いです。

背景に「入院治療に頼る医療形態」

 ――なぜ日本では身体拘束の実施数が多いのでしょうか。

 ◆精…

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