医療プレミア特集

塩野義製薬が新型コロナワクチン開発に挑むワケ/上

医療プレミア編集部
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インタビューに答える木山竜一・塩野義製薬医薬研究本部長=大阪市中央区で2021年3月11日、久保玲撮影
インタビューに答える木山竜一・塩野義製薬医薬研究本部長=大阪市中央区で2021年3月11日、久保玲撮影

 新型コロナウイルスのワクチン開発に世界中の製薬会社や研究者がしのぎを削る。海外メーカー製のワクチンの接種が先行して始まった一方、まだ完成したワクチンがない国内メーカーは「海外の周回遅れ」と指摘されることもある。現場の担当者は、どのような思いでワクチンの研究開発に取り組んでいるのか。ワクチンの実用化に向けた臨床試験(治験)を進める塩野義製薬(大阪市)の研究のトップ、木山竜一・医薬研究本部長へのインタビューを2回にわたって紹介する。初回は、同社が開発を進めるワクチンと海外製ワクチンとの違い、ワクチンの安全性について聞く。【医療プレミア編集部・永山悦子】

昆虫細胞を使うのは安定製造のため

 ――既に一般への接種が始まっているファイザー社やモデルナ社の「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」、アストラゼネカ社の「ウイルスベクターワクチン」は、新型コロナの遺伝子の一部を投与します。これは、これまで実際に使われたことがない新たな仕組みのワクチンです。塩野義製薬が開発を進めているワクチンは、どんな仕組みですか。

 ◆「遺伝子組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれます。新型コロナの遺伝子の一部を組み込んだ「バキュロウイルス」(人などに感染しないウイルス)に昆虫の細胞を感染させ、新型コロナの表面にある「スパイクたんぱく質」を作り、ワクチンとして投与します。スパイクたんぱく質は、体内の免疫を呼び起こす「抗原」となり、体内で新型コロナに対抗する「抗体」が作られます。抗体ができれば、新たに新型コロナが入ってきても症状が出にくかったり、症状が出ても重症化しにくかったりする効果が期待できます。

 接種が始まっているワクチンは遺伝子の一部を投与し、体内で抗原を作らせるタイプですが、私たちのワクチンは工場で作った抗原を投与します。「遺伝子組み換え」というと心配になるかもしれませんが、鶏卵で培養して作ってきた従来の季節性インフルエンザのワクチンと原理は同じです。従来の方法は「ニワトリの受精卵の中でウイルスを増殖させ、抗原になる部分だけを取り出す」、遺伝子組み換えたんぱくワクチンは「抗原になる部分の遺伝子をもとに、工場で培養した細胞を使って必要な抗原だけを作る」ものです。遺伝子組み換えたんぱくワクチンは、鶏卵を使うよりも早く安定して製造でき、インフルエンザワクチンなど国内外でこの技術から誕生したワクチンが実用化されています。

 ――「昆虫の細胞を使う」と聞くと、びっくりします。

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