医療プレミア特集

新型コロナワクチン開発 「それでも海外についていけなかった」/下

永山悦子・医療プレミア編集部兼論説室
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インタビューに答える木山竜一・塩野義製薬医薬研究本部長=大阪市中央区で2021年3月11日、久保玲撮影
インタビューに答える木山竜一・塩野義製薬医薬研究本部長=大阪市中央区で2021年3月11日、久保玲撮影

 新型コロナウイルスワクチンの開発を進める塩野義製薬(大阪市)の研究トップ、木山竜一・医薬研究本部長へのインタビュー2回目は、なぜ日本のワクチン開発が世界の後塵(こうじん)を拝すことになったのか、メーカーの事情や研究者の思い、承認を目指すワクチン開発のハードルについて聞いた。【医療プレミア編集部・永山悦子】

「遅い」指摘に「じくじたる思い」

 ――塩野義製薬は、今年末までに3000万人分のワクチン生産体制を実現すると発表しました。従来であればスピード感のある開発状況ですが、海外と比べると「日本は遅い」と言われます。

 ◆そのような指摘について、私たちもじくじたる思いがあります。今回の世界各国の動きを見て感じたのは、日本は「平時バイアス」が強いということです。平時バイアスとは、通常のやり方に固執しようとする思考です。これは政府だけではなく、社内、学会、医療界全体、メディアにもあるのではないかと思います。欧米、特に米国では、事が起きると「今は『戦時』のようにとらえるべきだ。やるべきことは最低限に抑えても先に進もう」というコンセンサスがすぐに形成されます。ところが、日本は「そんなことをやっていいのか」「普段だったら許されない」という指摘が出てきます。そして、欧米は過半数が「GO(進めよう)」と言えば前進しますが、日本は全員の賛成が求められ、決断が遅くなりやすいのです。

 そもそも、医薬品に対して、欧米は「効くことが一番大切。さらに安全性があればなお良い」、日本は「安全性が第一。そのうえで効果の高いものを探す」という考え方の違いもあります。

 ――安全保障的な観点が、日本には欠けているということでしょうか。

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永山悦子

医療プレミア編集部兼論説室

1991年入社。和歌山支局、前橋支局、科学環境部、オピニオングループなどを経て、2021年4月から医療プレミア編集長兼論説室。2010年に小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還をオーストラリアの砂漠で取材した。はやぶさ2も計画段階から追いかける。ツイッターは、はやぶさ毎日(@mai_hayabusa)。医療分野では、がん医療や生命科学の取材を続ける。好きなものは、旅と自然と山歩きとベラスケス。お酒はそこそこ。