医療プレミア特集

「僕が跳びはねる理由」で知る発達障害の誤解/上

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
  • 文字
  • 印刷
海外の映画祭でも高い評価を得た映画「僕が跳びはねる理由」の一場面(C)2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute
海外の映画祭でも高い評価を得た映画「僕が跳びはねる理由」の一場面(C)2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

 なぜ大声が出たり、跳びはねたりするのか--。重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)である東田直樹さん(28)が13歳のときに心の内をつづったエッセー「自閉症の僕が跳びはねる理由」(2007年、エスコアール/角川文庫/角川つばさ文庫)は30カ国以上で出版されて大ベストセラーになった。この本を原作にしたイギリスのドキュメンタリー映画が、現在公開中の「僕が跳びはねる理由」(20年)だ。東田さんとの共著もある、精神科医の山登敬之さん(63)は、「意識の高い人だけでなく、障害者と接点のない人にも見てもらいたいです」と話した。【聞き手・西田佐保子】

映画で描かれるASDの人々が抱える苦しみ

 ――「僕が跳びはねる理由」では、米国やインドなどに住む重度のASDの方々の知的かつ創造的で繊細な内面、伝えることができない苦しみや悲しみ、そして家族の苦悩をカメラが捉えます。山登さんは、映画を見てどのような感想を持ちましたか。

 ◆まずは、「東田さん、よかったね!」ですね。「自閉症の僕が跳びはねる理由」がベストセラーになったときにも驚きましたが、この映画で、ASDの方々の存在や彼らの内面を多くの人に知ってもらえるのは、とても素晴らしいことです。東田さんを推していたかいがありました(笑い)。

 映画では、ASDの子どもたちが、何に苦しみ、悔しい思いをしているかが描かれています。例えば、ベンさんとエマさんが歴史の授業を受けているシーンで、アルゼンチンのかつての大統領の名前を先生に聞かれると、アルファベットが書かれた「コミュニケーションボード」を使って彼らは正しく「(フアン)ペロン」と答えられる。「以前の学校教育は?」と質問されると、2人は「時間の無駄」「人権の否定」などと文字盤を指さしながら答えます。

 日本では、あのような重度のASDの方々の多くは、特別支援学校に通います。世界の歴史を学ぶ機会などあまりないのでは? 教育の機会均等が与えられていないことはとても残念です。また、精神科では、重度の知的障害の人と同じ扱いで、もちろん、重度の知的障害の人にそのような扱いをしていいわけではありませんが、かつては精神科病院に入院させられて柱にくくられたままにされるといった時代もありました。

 今よりもっとASDの方々を支援できる方法は絶対にあるはずですが、わりと雑な扱いを受けているケースが多い。今も、精神科病院の閉鎖病棟に入れられて生活している人の中に、ベンさんやエマさん、また東田さんのような人がいるかもしれない。そのようなことを考えると、精神科医としては、たいへん申し訳ない気持ちになります。

 ――山登さんは、「この地球(ほし)にすんでいる僕の仲間たちへ 12歳の僕が知…

この記事は有料記事です。

残り2083文字(全文3214文字)

西田佐保子

毎日新聞 医療プレミア編集部

にしだ・さほこ 1974年東京生まれ。 2014年11月、デジタルメディア局に配属。20年12月より現職。興味のあるテーマ:認知症、予防医療、ターミナルケア。