医療プレミア特集

発達障害は「障害」か 発達マイノリティーという考え方/下

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
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公開中のドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」の一場面(C)2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute
公開中のドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」の一場面(C)2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

 「発達障害」は、先天的な脳の機能の偏りにより生じる障害の総称で、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、特異的学習障害(LD/SLD)などが含まれます。重度のASDの作家・東田直樹さん(28)によるエッセー「自閉症の僕が跳びはねる理由」が原作のイギリスのドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」(2020年)の字幕を監修した、明治大学子どものこころクリニック院長で、東田さんとも交流のある山登敬之さん(63)は、発達障害ではなく、発達マイノリティーと呼ぶことを提唱しています。(前編「映画「僕が跳びはねる理由」で知る発達障害の誤解/上」)

発達障害は病気ではない

 ――山登さんは、精神的ストレスから生じるうつ病や統合失調症などの2次障害がなければ、特に発達障害に積極的な診断は必要ないとの考えをお持ちですが、その理由をお聞かせください。

 ◆発達障害は病気ではありません。「障害」とされているものは生物学的な特徴であり、個人差です。個人が困ることなく生活できていれば、診断の必要はないと思います。ただ、2次障害の他にも、日々の日常生活を送る上で支障があり、ご本人が悩み、周りも心配するケースなどがあります。その場合、医者がサポートできることがあれば、もちろんします。福祉のサービスを受けるために診断書が必要になるとか、そういうときも、ですね。

――いわゆる“大人の発達障害ブーム”で、その概念は広く知られるようになりました。

 ◆ASDであれADHDであれ、発達障害の人は、周囲の人と比べ自分にはできないことが多い、自分は周囲と違うなどと感じて、寂しい思いも悔しい思いも重ねてきています。「大人になって発達障害と診断をされて、自分の生きづらさに合点がいって、それから道が開けた」といった話ばかり注目されます。しかし、診断がついたからといって根本的な問題が解消されるわけではありません。発達障害に根本的な治療法はないのが現実ですし、必要なのは治療より支援です。マイノリティーはマイノリティーのまま生きていく。大変な思いをすることには変わりがないわけですよね。だからこそ、支援の重要性に目を向けるべきだと思います。

――ADHDの場合、薬物治療という選択肢もあります。また、不注意、多動性、衝動性などADHD特有の思考の“癖”と捉え、何らかの対策を取ることも可能ではないでしょうか。

 ◆確かにADHDの場合はできないことが具体的なので、工夫のしがいがあると思います。ASDの人たちのように、コミュニケーションの仕方がわからず人間関係を築けないという方に、助言をひとつするのも難しいじゃないですか。その点で言えば、ASDとADHDでは異なります。

 ――先ほども「マイノリティー」という言葉が出てきましたが、山登さんは「発達障害」の代わりに「発達マイノリティー」と呼ぶことを提唱されています。

 ◆「セク…

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西田佐保子

毎日新聞 医療プレミア編集部

にしだ・さほこ 1974年東京生まれ。 2014年11月、デジタルメディア局に配属。20年12月より現職。興味のあるテーマ:認知症、予防医療、ターミナルケア。