健康をつくる栄養学のキホン

見直される妊娠中の体重 食事のコツは?

成田崇信・管理栄養士
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写真はゲッティ
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 妊娠中の女性の望ましい体重増加量について、厚生労働省は近くこの目安を引き上げる方針であると、報道されました。大きな変更点として、妊娠前の体格がやせている人ほど、妊娠中に望ましい体重増加の目安が増えており、従来の目安に比べ、低体重の人では3キロ、普通の人では1~3キロとなります。 現在の目安が定められて15年となりますが、今回の提言の背景にどのような事情があるのでしょう。母子の健康と栄養の観点から解説します。

従来の体重増加量の目安の問題点

 妊娠中の体重増加は、胎児の成長と、胎児を育てるための胎盤などの発達や体を流れる血液量が増えることによる生理的な現象です。この体重増加量が少ないと胎児の正常な発達に必要な栄養が供給できず、十分に育たないまま出産(低出生体重児)される確率が高くなると考えられます。反対に体重が増えすぎると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など母体と胎児に悪影響を与える疾病のリスクが高くなるため、望ましい体重増加の目安が示され指導されてきた背景があります。

 妊娠中の体重増加が適切であるかどうか、その指標の一つに赤ちゃんの体重があります。体重が2500グラム未満で生まれてきた子どものことを低出生体重児と呼びますが、1980年代には5%程度であった低出生体重児の割合が2000年代まで増加を続け、07年の9.7%をピークに、現在まで9%台半ばの水準に高止まりしている現状です。低出生体重児は妊娠前の女性の体重と、妊娠中の体重増加が不十分であることが関係しており、従来の体重増加の目安では、十分な栄養摂取の妨げになっているのでは、という疑問が示されるようになってきていました。 

 妊娠中に十分な栄養が与えられなかったことによる低出生体重児では、低体温症や低血糖といった生命にかかわる問題や、将来の高血圧など循環器疾患のリスクが高くなるなどの問題も指摘されています。あまり知られていないところでは、鉄を十分貯蔵できないまま生まれたことにより、母乳の栄養だけでは貧血が起こりやすいという栄養上の問題もあります。

 さらに最近の調査結果では、従来の体重増加の目安を守ることに妊娠高血圧症候群の予防効果は認められなかったとされており、母子の健康の観点から基準を引き上げる提言がなされました。

 妊娠中の体重抑制について、メリットをデメリットが上回ると判断されたため、新しい指針が提言されることになった、といえるでしょう。

妊娠中の食事指導はどう変化する?

 これまでの妊娠期の食事指導では、体重増加ペースが目安になる体重増加ペースを上回る場合、食事を控えるようにアドバイスをする傾向がみられまし…

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成田崇信

管理栄養士

なりた・たかのぶ 1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書「新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK」(内外出版社)を執筆。共著に「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」(メタモル出版)、監修として「子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ」(オレンジページ)などに携わっている。