医療プレミア特集

高齢者向け「3歩住宅」という提案

医療プレミア編集部
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高機能のベッドやトイレ、シャワーを「3歩」の近さに配置した「自立のための3歩の住まい」=静岡県長泉町の静岡県医療健康産業研究開発センターで2021年2月26日、石川宏撮影
高機能のベッドやトイレ、シャワーを「3歩」の近さに配置した「自立のための3歩の住まい」=静岡県長泉町の静岡県医療健康産業研究開発センターで2021年2月26日、石川宏撮影

 高機能のベッドとトイレ、シャワーと洗面所を「3歩」の近さに集めれば、介護や支援が必要だった高齢者も、自立して1人で暮らせるはず――。こんなコンセプトのモデルルーム「自立のための3歩の住まい」を、医療健康産業の集積を目指す静岡県のファルマバレーセンターと県立静岡がんセンターが県医療健康産業研究開発センター(同県長泉町下長窪)に共同で作った。「人生100年時代における高齢者のための住まい」を目指しているという。【沼津支局・石川宏】

3歩の範囲に暮らしの機能を集める

 「平均寿命と(自立した暮らしができなくなる)健康寿命との間には約10年の差がある。他人の力を借りずに自宅でどれだけ過ごせるかがテーマ。年をとった自分の両親の暮らしや、がんセンターの病室を参考に部屋を設計した」。がんセンターの山口建総長はこう説明する。

 モデルルームの広さは28平方メートル。「豪邸に住んでいたとしても、健康寿命が尽きると暮らす広さは8畳で済ませるようになる」(山口総長)。だから考えたのが「3歩の住まい」だ。このモデルルームでは、3歩は最大約3メートル(大股で1歩1メートル)を想定。暮らすために必要な機能を、すべてその範囲内に収めた。

 ベッドは、①横になって寝た姿勢、②頭だけ起こしてゆったりとくつろぐ姿勢、③床に足をつけて座る姿勢、④背中が押されて立ち上がりを支える姿勢――と四つの姿勢がボタン操作で選べる。シャワーは、椅子に座った状態で浴びることができ、左右から温浴効果のあるミストシャワーが体を包み込む。トイレには、登録した家族が使用状況をスマートフォンのアプリで確認できる「見守り機能」を備える。

 洗面台は車椅子のまま使えて、照明をつけたり水を出したりするのは手で触れずに操作できるタッチレスだ。床は表面のメラミン材シートに①抗菌②抗ウイルス③抗アレルギー④防臭――の四つの機能を持たせた。さらにウレタンなどの三重構造にすることによって衝撃を和らげている。高齢者に多い転倒による骨折を防ぐためだ。

 これらは関係する各企業の最先端の製品でもある。ベッドは、フランスベッドが2020年に発売を始めた高機能ベッド。シャワーやトイレはパナソニック、床材はアイカ工業の開発中の製品だ。抗菌や防臭それぞれの機能がある床材は既にあるが、4機能をそろえたものは初めてという。これらを「3歩」の近さに集めた。

 このほか、部屋の天井には医薬品や雑貨を運べる生活補助天井レールを設けた。モデルルームは予算の関係で手動にしているが、実際はボタン操作で動く電動を想定している。移動リフトを装着することも検討しているという。

家族がスマホから見守…

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