医療プレミア特集

改正児童福祉法5年 塩崎元厚労相の現状認識は

医療プレミア編集部
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インタビューに答える塩崎恭久・元厚生労働相=衆院第1議員会館で2021年2月19日、大西岳彦撮影
インタビューに答える塩崎恭久・元厚生労働相=衆院第1議員会館で2021年2月19日、大西岳彦撮影

 「子どもの権利」が初めて児童福祉法に明記された2016年5月の法改正から、5年を迎える。国や自治体は子育てをする保護者を支援し、養育が難しい場合は原則として里親などの「家庭」で子どもを育てるのが責務となった。子どもを巡る環境はどう変わったのか。当時、厚生労働相として法改正を推し進め、自民党の「児童の養護と未来を考える議員連盟」会長を務める塩崎恭久・衆院議員に聞いた。【黒田阿紗子、谷本仁美】

「大臣指示」繰り返し改正案作る

 ――この1年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、子どもたちの生活環境は大きく変化しました。

 ◆海外の研究者が、家庭における児童虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)が増えたことを報告していて、「やっぱりそうか」と思いました。日本も(感染拡大防止のために)巣ごもり状態の中、一時は児童相談所の職員が家庭訪問をしにくい状態でした。見えないところで子どもが虐待され、健全な養育を受ける権利を侵害されているケースが多いのではないかと懸念しています。

 ――5年前、児童福祉法の抜本改正によって、初めて「子どもの権利」が国内法の中に明記されました。昨年7月に出版された著書「『真に』子どもにやさしい国をめざして」では、厚労相として法改正を実現させた過程が書かれています。

 ◆当時、厚労省の有識者会議では改正法案の詳細がまとまらず、「事務局預かり」、つまり事実上大臣が引き取って議論することになりました。条文を詰める事務方に、文書による「大臣指示」を約2カ月の間に7回出すという異例のやり方で、改正法案を作りました。最終的に、子どもが権利の主体であり、子どもの最善の利益が優先して考慮されること、そして(施設養育よりも)家庭養育を優先するという三つの原則を理念に盛り込むことができました。

乳幼児期の「愛着」形成を目指す

 ――その原動力について、著書では15年4月に「衝撃的なブレイン・ストームの機会」があったと記されています。

 ◆子どもの問題に信念を持って取り組んでこられた約10人の専門家の方々と会う機会がありました。その中の一人から、「戦後の児童養護の歴史は『浮浪児対策』のままで来てしまった」という強烈な指摘を受けたのです。これは児童福祉法の抜本的な改正が必要だと、使命感を駆り立てられました。

 子どもにとって、乳幼児期の愛着(特定の養育者との情緒的な結びつき)の形成が大事だということも、その時に改めて教わりました。子どもは実親の家庭で養育されるべきですが、それが望ましくない場合、次に考慮されるべきは愛着形成が可能な特別養子縁組や里親だということです。

 17年に私が厚労相を退任する前日に、(家庭養育を優先するなど改正法の実現に向けた具体策を記した)「新しい社会的養育ビジョン」がまとまりました。当時は実親が養育できない子どもの8割以上が施設で養育されていました。大きな方針転換に対しては事務方や施設関係者などからの反発も大きかっただけに、何としても在任中に道筋をつけたいと思っていました。

都道府県計画で目標を設定

 ――この5年で、どういう成果があったと思いますか。

 ◆まずは特別養子縁組制度です。これまで養親が行っていた家庭裁判所への申し立て手続きを2段階に分け、実親の同意や実親による監護が相当でないことを審理する第1段階の審判の申し立ては、児童相談所長もできるようになりました。養親は、(養親と子どものマッチングの審判である)第2段階の申し立てだけで済むようになり、負担が大幅に減りました。

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