
一般的に、高品質な商品ほど価格は高くなります。電化製品でも、新しく、多機能なほど高額です。では、日本で受けるがん治療も、価格が高いほど効果が期待できるのでしょうか?
価格を指標にして選ばない
がん治療でまず選ぶべきは「標準治療」だと、前回お話ししました。標準治療は、がん専門医がいる病院で一般的に行われており、公的医療保険が適用されます。数あるがん治療の中でも安全性が高く、明確な効果が確認されている治療法です。
では、標準治療の治療費がもっとも高いのでしょうか?
決してそうではありません。私たちが標準治療に自費で払う金額の合計は入院治療の場合、平均で20万円前後とされています(2018年度厚生労働省医療給付実態調査)。もちろん、がんの種類や進行度、治療内容によって大きく変わりますが、大体このくらいの価格となっています。
一方、インターネットなどでクリニックが宣伝する「自由診療」により行われるがん治療の中には、時に100万円を超える高額なものがあります。価格だけを比較すると、20万円より100万円の治療が効きそうだと思う人もいるでしょう。しかし、代替療法の一つである自由診療は一部を除き、科学的根拠が不明確で、標準治療に比べてはるかに信頼性に劣ります。
つまり、価格は効果と相関していません。ではなぜ、効果が証明されている標準治療の方が安いのでしょうか?
公的医療保険の恩恵
がんの標準治療が比較的安価なのは、高額療養費制度を含む医療保険のおかげです。がんの種類などにより幅はありますが、標準治療には60万~100万円程度かかるとされています(2018年度厚生労働省医療給付実態調査)。ですが、患者さんはその金額の1~3割…
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