環境と健康の深い関係

日本と世界で汚染を広げる「永遠の化学物質」

遠山千春・東京大学名誉教授(環境保健医学)
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「メンダカリヒーガー」と呼ばれる湧き水。高濃度のPFOSやPFOAが検出されている=沖縄県宜野湾市で2020年10月8日午後0時6分、遠藤孝康撮影
「メンダカリヒーガー」と呼ばれる湧き水。高濃度のPFOSやPFOAが検出されている=沖縄県宜野湾市で2020年10月8日午後0時6分、遠藤孝康撮影

 さまざまな化学物質による地球規模での汚染の広がりによって、生態系がかく乱され人の健康が脅かされています。汚染は産業革命以降に増えはじめ、都市への過度な人口集中や、地域における種々の産業活動によって歯止めがかからなくなっています。その中で、(1)環境中に残留し続ける(2)体内に蓄積する(3)毒性が高い――といった条件にあてはまる有機化学物質は「残留性有機汚染物質」(Persistent Organic Pollutants;英語の頭文字からPOPs)と呼ばれ、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」のもとで規制を受けています。この条約の規制対象には、よく知られたポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシンなどがあります。そして、こちらは耳慣れない方が多そうな化学物質「ペルフルオロオクタン酸」(PFOA)と「ペルフルオロオクタンスルホン酸」(PFOS)も規制対象です。この二つには、化学構造が類似した仲間が5000種類近くもあり、それらはまとめて「PFAS」(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれます。PFASは便利に使われてきた物質ですが、ごく微量で人の健康に影響すると推定されているうえ、なかなか分解せず環境に長期間残り、無害化処理も難しい厄介ものです。この記事では、このPFASについて、最近の話題を記します。

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遠山千春

東京大学名誉教授(環境保健医学)

とおやま・ちはる 1950年、東京都出身。東京大学医学部保健学科卒、ロチェスター大学大学院修了。医学博士、Ph.D。国立公害研究所(現・国立環境研究所)領域長、東京大学医学系研究科疾患生命工学センター教授を経て、2015年4月より「健康環境科学技術 国際コンサルティング(HESTIC)」主幹。中国医科大学客員教授。世界保健機関、内閣府食品安全委員会、環境省などの専門委員、日本衛生学会理事長、日本毒性学会理事、日本医学会連合理事などを歴任。