医療プレミア特集

ポーランドの新型コロナ事情 現地で気付いたこと

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ワクチン接種前に渡されたアストラゼネカ製ワクチンの接種証明書の表面=2021年5月、島森浩一郎さん撮影
ワクチン接種前に渡されたアストラゼネカ製ワクチンの接種証明書の表面=2021年5月、島森浩一郎さん撮影

 新型コロナウイルスは、欧州でも多くの感染者や死者を出している。英国やフランス、イタリアやスウェーデンなど西欧、北欧のニュースは多く報じられてきたが、中東欧諸国はどんな状況なのだろうか。ポーランド在住の日本企業駐在員、島森浩一郎さん(45)から、厳格な規制で感染に向き合う現地の様子を紹介するルポが届いた。島森さんはアストラゼネカ製のワクチン接種も経験。接種会場の様子や副反応の経過もつづり、日本とは異なる整然とした接種の仕組みに「良い意味で期待を裏切られた」と感想を述べている。(写真特集はこちら)

いきなり厳しいロックダウンに遭遇

 筆者は、新型コロナの流行が始まった昨年2月末、ポーランドの首都ワルシャワへ赴任しました。その後、当地で経験した事態の推移や、最新のワクチン事情などをお伝えしたいと思います。

 赴任からわずか2週間後、欧州各国は都市封鎖(ロックダウン)に突入しました。イタリアなどに比べ、当時ポーランドでは1日の新規感染者は2000人台と、感染拡大を抑えられていました。食料品店と薬局以外の店舗やホテルの営業停止をはじめ、劇場・映画館などの文化施設やスポーツ施設の閉鎖、学校の授業の完全リモート化、未成年者の保護者なしでの外出禁止など、厳格な措置を早急に講じたことが奏功したようです。

 路上では警官が頻繁に巡回し、マスクを着けていない人や近い距離で歩いている人を注意し、食料品店や交通機関は入場者数を制限したうえ、手の消毒と手袋着用が必須でした。在宅勤務も徹底され、首都中心部でも外を歩く人はまばらでした。子どもたちもリモート授業になり、ロックダウン中は街で子どもを見ることはあまりありませんでした。

 7月に入ると、ポーランド国内はロックダウン前に近い状況に戻りました。外国旅行ができないため、夏休みの地方都市は自国の観光客でにぎわいました。カフェやレストランも営業を再開したので、マスクを着用することを除いては、日常の光景が戻ったように錯覚しました。

第2波襲来と「国家総隔離」

 しかし、この状況は長くは続きませんでした。11月になると、平均1000人以下で抑えられていた新規感染者数が2万人を記録する日が出てきました。第2波の襲来です。

 飲食店や文化施設などの閉鎖、交通機関の利用者数制限など、再び春の状況に逆戻り。そして、政府は12月末から「国家総隔離」の導入に踏み切りました。既存の規制に加えて、国境管理と入国後隔離がより厳格になりました。この最高レベルの対策は当初は3週間ほどで終わる予定でしたが、何度も延長を重ね、最終的には今年5月まで続きました。

 強い規制にもかかわらず感染者数が増えたのは、クリスマス休暇前後から流入した英国型の変異株が猛威を振るったことにありました。

過去最悪の第3波

 今年2月下旬から4月上旬にかけての第3波では、人口3800万人の国で、1日の新規感染者数が約3万5000人、死者が約700人に達しました。病床使用率も8割を記録し、「どの数字を見ても過去最悪」という日々が続きました。ところが、4月中旬以降、感染者数は急減し、現在(5月中旬)は毎日1000人台から3000人台で推移しています。これはワクチン接種拡大の時期と見事に一致しています。

効率的なワクチン普及計画

 欧州の中でも、ポーランドはワクチン普及のスピードが速いほうです。しかも、極めて効率的な方法で着実に進行していると感じます。

 年明けから最優先で医療従事者、次に警官などの公務員や教師を対象に開始しました。続いて、一般の高齢者が対象となり、4月中旬には国内で900万回の接種が完了しました。政府は未使用ワクチンの無駄をなくす観点から接種計画をさらに加速させ、40代半ばから18歳までの一般の成人の接種予約も開始しています。

 現在、欧州連合(EU)はファイザー、アストラゼネカ、モデルナ、ヤンセンの4種のワクチンを承認していますが、ポーランドではファイザーとアストラゼネカのワクチンが導入されています。

 特に感心したのは、国の一括管理により混乱を招かない仕組みです。ポーランドでは全国民が「PESEL(ぺセル)」と呼ばれる個人番号を持っています。住民登録や納税など幅広い社会生活で使うIDです。注目すべきは、最初の8桁が生年月日になっている点です。今回のワクチン予約もこの特徴を生かし、4月26日からの2週間で毎日、生まれた年が1974年から2003年まで、2~3年ずつ区切って登録を受け付け、接種希望者が予約開始時に殺到することを防いでいました。

 また、予約は電話、インターネット、スマートフォンのショートメールなど複数用意され、居住地や接種可能日などを選択し、PESELによって自動的に登録手続きが完了します。あとは予約日にIDカードを持って指定病院へ行くだけ。日本のように、事前に接種券やクーポンが郵送されてきたり書類を準備したりす…

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