無難に生きる方法論

高齢夫婦の危機 避けるためにできること

石蔵文信・大阪大学招へい教授
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続く殺人事件

 前にも触れましたが、2019年に福井県で起きた71歳の妻が義理の両親と夫を介護疲れから殺害し、自身も心中を図った事件について、妻に懲役18年の判決が下りました。通常3人を殺害した場合は死刑相当ともされますが、それよりは軽い刑となり、家族はさらに減刑を求めています。

 今年3月には、介護疲れと長年の夫へのうらみから妻がノコギリで夫の首を切ったという恐ろしい事件が起きました。この事件では、退職金を持って愛人と一緒になった夫が、体を壊して愛人から見捨てられ、長男の強い希望で元妻宅に戻っていたようです。殺人という行為は許されるものではありませんが、長年の夫の不義理などから妻の怒りに対して理解を示すコメントもあったようです。

 さらに、福岡県内の75歳の妻が、83歳の夫の首を絞めて殺害した容疑で逮捕されています。いずれの事件もかなり高齢の妻が夫を含めた家族を殺害しています。

 いずれも介護に関係する、殺人事件のようにも見えます。最初に紹介した事件は、確かに「うらみつらみ」というよりは介護疲れが主な原因だと推測されますが、後の二つの事件は、夫への強いうらみが背景にあったのではないでしょうか。

 高齢の夫が妻を殺す場合は、病気の妻の介護疲れで心中を図ったものの、自分だけ死にきれなかったという例が多いようです。そして、夫の妻に対する強い憎しみはあまり感じられません。このような殺人事件や心中などという不幸を防ぐためには、どんなことが必要なのでしょうか。

事件が起きる背景…

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石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。