漢方ことはじめ

ワクチン副反応を漢方医学の視点で考える

津田篤太郎・NTT東日本関東病院リウマチ膠原病科部長
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 先日、医療関係者向けの新型コロナウイルスのワクチン接種を受けました。1度目はほとんど痛みも何も感じず、インフルエンザワクチンと比べてもずいぶん楽だなあと思ったほどでしたが、2度目の接種の後は、時間がたつにつれ接種した上腕がズーンと重くなり、次の日は背中や首が全体的に痛くなり、頭痛も加わってしばらく寝込んでしまうぐらいに、つらい症状が出てしまいました。「もう耐えられない!」というところまで我慢して、家にあった葛根湯(かっこんとう)を何度か服用したところ、スーッと楽になって、次の日は問題なく仕事ができました。

 さて、ワクチンを接種した後、私の経験したようなつらい症状が出る「ワクチンA」と、そのような症状が全く出ない「ワクチンB」があったとしましょう。どちらが「良い」ワクチンだといえるでしょうか?

 「当然ワクチンBにちがいない。副反応が全くないワクチンがあるんだったらそれが一番いいに決まっているじゃないか!」

 現代では、そう捉えるのが一般的でしょう。ところが天然痘ワクチン「種痘」ではまったく事情が異なります。感染して症状が出ることが前提となっているワクチンですから、発熱や発疹などの症状が出れば、「善感(ワクチン接種成功)」、症状が全く出ない場合は「不善感(ワクチン接種失敗)」と判断されます。

 漢方医がワクチン接種を行っていた時代、医師は接種後に起こる体の変化を、実に細やかにフォローアップしていました。当時のワクチン手引書をひもとくと、日々変化していく接種部位の皮膚の様子を描いたイラストをたくさん見ることができます。

 特に、天然痘のワクチンとして、家畜のウィルスを使う「牛痘法」が広く導入される前の、ヒトの天然痘ウイルスそのものを使用していた「人痘法」の時代は、重症の天然痘になってしまうのもある程度覚悟のうえで接種していたわけですから、医師は祈るような思いで真剣に毎日観察していたのだろうと思います。

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津田篤太郎

NTT東日本関東病院リウマチ膠原病科部長

1976年京都生まれ。京都大学医学部卒。北里大学大学院修了(専攻は東洋医学)。東京女子医大付属膠原病リウマチ痛風センター、JR東京総合病院、聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Centerを経て、現在、NTT東日本関東病院リウマチ膠原病科部長。福島県立医科大学非常勤講師。著書に「未来の漢方」(森まゆみと共著、亜紀書房)、「漢方水先案内 医学の東へ」(医学書院)、「ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話」(上橋菜穂子との共著、文藝春秋)など。訳書に「閃めく経絡―現代医学のミステリーに鍼灸の“サイエンス"が挑む! 」(D.キーオン著、須田万勢らと共訳)がある。