医療プレミア特集

避妊、生理痛の改善効果も ピルやミレーナどう選ぶ? 宋美玄さんに聞く/上

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
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「生理痛は当たり前ではありません。生理中の症状に悩んでいる人も、生理中は憂鬱だという人も、ぜひ一度、産婦人科で相談してみてください」と話す宋美玄さん=本人提供
「生理痛は当たり前ではありません。生理中の症状に悩んでいる人も、生理中は憂鬱だという人も、ぜひ一度、産婦人科で相談してみてください」と話す宋美玄さん=本人提供

 2019年度の人工妊娠中絶の件数は15万6430件(衛生行政報告例・母体保護関係)だった。予期せぬ妊娠により中絶した女性も少なくない。日本で避妊方法として多く選択されているのは、コンドームや、極めて効果の低い膣(ちつ)外射精だ。一方、避妊効果が高く、生理中の腹痛・頭痛・便秘などの月経困難症(生理痛)や子宮内膜症などの治療にも有効な経口避妊薬(ピル)や子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS、避妊器具)の普及率は低い。「ぜひ使用を検討してみてほしい。ピルに抵抗がある人は『黄体ホルモン療法』もおすすめです」。そう話すのは、産婦人科医の宋美玄(ソン・ミヒョン)さん(45)だ。【聞き手・西田佐保子】

生理痛は当たり前ではない

 ――現在、日本で女性が主体的に選べる主な避妊法として、ピル、IUSの「ミレーナ」(製品名)、銅付加IUD(子宮内避妊用具)などがあります。ピルやIUSといった女性ホルモン製剤による避妊は、月経困難症の改善などの利点(副効用)もあります。

 ◆そうですね。一般的なものはピル、ミレーナでしょうか。また、日本では避妊目的での処方はできませんが、月経困難症で悩む人であれば「黄体ホルモン製剤」という選択肢もあります。月経困難症の他にも、子宮内膜症、子宮腺筋症の治療薬としても使用されていて、これらの治療目的の場合は保険適用となります。保険適用かつジェネリック(後発医薬品)では、1カ月の薬代の自己負担が500円程度と比較的安価です。連続服用することで避妊効果もありますので、後ほど詳しくご紹介します。

 ピルには、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲスチン(黄体ホルモン)」に似た成分を混合した「ピル」と、黄体ホルモンだけの「ミニピル」(国内では未承認)があります。ピルの服用により体内の女性ホルモン濃度を一定に保ち、排卵を抑制することで高い避妊効果を得ることが可能です。子宮内膜の増殖を抑え、月経血の量が減り、子宮内膜症の治療や月経困難症の改善効果、月経前症候群(PMS)の軽減も期待できます。

 ピルは10代から使用可能ですが、年齢とともに血栓症のリスクが上がるので、40代以降はリスクを理解した上での投与となります。35歳以上の喫煙者や、体格指数(BMI=体重kg÷身長m÷身長m)が30以上の方もリスクが高くなります。

 ――ピルには、卵胞ホルモンの量が異なる超低用量(0.03mg未満)、低用量(0.05mg未満)、中用量(0.05mg)、高用量(0.05mg以上)▽ホルモンの配合量が異なる1相性、2相性、3相性▽人工的に合成された黄体ホルモン「プロゲスチン」の開発された順に第1世代、第2世代、第3世代、第4世代――など、さまざまな種類があります。どのように選べばいいのでしょうか。

 ◆今の主流は、超低量で、毎日同じ量のホルモンが入っている1相性ですね。ただし、最初からその人に合ったピルが分かるわけではありません。医師は、使用目的や、その人の症状や体質に合いそうなピルを選びます。患者さんは処方されたピルを服用して、副作用があれば他の製品に切り替えるなどして、最適なものを選んでいきます。

 新しく開発されたピルほど優秀とも限りません。第1世代の「ルナベル」もいい薬ですし、保険適用外ですが第3世代の「マーベロン」は男性ホルモン(アンドロゲン)の活性を抑えているため、口の周りのニキビに悩んでいる人には好まれます。

 ――「高額」というイメージを持っている人が多いピルですが、保険適用になるものもありますね。

 ◆避妊や月経コントロール(月経周期の変更)目的の場合は保険適用外ですが、多くの女性が悩まされる月経困難症やPMS、子宮内膜症の治療を目的とする場合は保険適用になるピルがあります。治療で処方される場合、初診料や再診料は別として、薬代が1カ月約600~2800円、保険適用外だと2000~4000円です。

 女性に生まれたことで、毎月生理があってQOL(生活の質)が下がる。それだけでハンディともいえます。生理痛は「当たり前のこと」ではありません。生理中の症状に悩んでいる人も、生理中は憂鬱だという人も、ぜひ一度、産婦人科で相談してみてください…

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西田佐保子

毎日新聞 医療プレミア編集部

にしだ・さほこ 1974年東京生まれ。 2014年11月、デジタルメディア局に配属。20年12月より現職。興味のあるテーマ:認知症、予防医療、ターミナルケア。