地域で暮らし続ける~日本とデンマークの現場から

新型コロナで再び デンマークの国境付近の検問所

銭本隆行・日本医療大学認知症研究所研究員
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ドイツ(手前)とデンマークの国境付近。右側にある小さな石柱が両国の国境を示している=筆者撮影
ドイツ(手前)とデンマークの国境付近。右側にある小さな石柱が両国の国境を示している=筆者撮影

 新型コロナウイルスは世界で相変わらず猛威を振るっていますが、ワクチン接種が進むにつれて欧米では状況がかなり変わってきています。デンマークではすでに全国民の半数以上が接種を済ませており、社会全体が落ち着きを取り戻しつつあります。日本からの渡航も6月5日からは入国時の検査は必要ですが、それ以外は特別な制約がなくなりました。一方、日本への渡航や帰国にはいまだに2週間の自宅または宿泊施設での待機などの制約があります。

 こうした渡航に関する話をするとき、海に囲まれている日本人は無意識に、飛行機による入国、つまり空路を想定しがちですよね。もちろん海路を想定する人もいるでしょうが、決して多くはないと思います。しかし、大陸にあるデンマークでは、多くの日本人が経験したことない周囲の国々との陸路が当然存在します。つまり、目に見える国境です。

国境は市町村の境みたいな感覚

 ヨーロッパでは、26カ国の間で、国境を検査なしで越えられるようにする「シェンゲン協定」が結ばれています。1985年にフランス、西ドイツ(現ドイツ)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの5カ国ではじまり、現在26カ国に広がっています。その結果、加盟国間の国境では検査が廃止されています。ドイツとデンマークの国境も同様で、市町村の境程度の感覚でしかありません。

 たとえば、…

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銭本隆行

日本医療大学認知症研究所研究員

ぜにもと・たかゆき 1968年広島市生まれ、福岡市育ち。51歳。早稲田大学政治経済学部在学中にヨーロッパを放浪。そのときにデンマークと出会う。大学卒業後、時事通信社、産経新聞社で、11年間の記者生活を送る。2006年にデンマークへ渡り、デンマーク独自の学校制度「国民高等学校」であるノアフュンス・ホイスコーレの短期研修部門「日欧文化交流学院」の学院長を務めた。全寮制の同校で知的障害者のデンマーク人らと共に暮らし、日本からの福祉、教育、医療分野に関する研修を受け入れながら、デンマークと日本との交流を行ってきた。2010年にオーデンセペダゴー大学で教鞭を執り、2013年にはデンマークの認知症コーディネーター教育を受けた。  2015年末に日本に帰国し、2016年3月に名古屋市の日本福祉大通信制大学院で認知症ケアシステムに関する修士号を取得し、同年、福岡市の精神障害者の生活訓練事業所の設立・運営に携わる。現在は札幌市の日本医療大学認知症研究所と名古屋市の日本福祉大学大学院博士後期課程に在籍しながら地域包括ケアシステムに関する研究を進めている。ノーマライゼーション理念の提唱者であるデンマーク人の故N.E.バンクミケルセンにちなむN.E.バンクミケルセン記念財団理事も務める。