ご自身の大切な友人が、がんになってしまったら、あなたは何をしますか?

 「助けになりたい」と、治療法について一生懸命に調べて、アドバイスしようとするかもしれません。これはとてもよくみられる行動で、実際、何らかの助言をした経験がある人もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、その助言が、プラスになることは少なく、むしろがん患者さんを困らせてしまうケースがあります。それがなぜなのかを解説したいと思います。

ネットに広がる不正確な情報

 がん患者さんが周囲の人に「自分はがんである」と打ち明けると、多くの方は「○○というキノコががんに効くらしいの。送るから食べてね」「○○病院の○○治療はすごくて、末期がんでも治るらしいよ」など「アドバイスの嵐」を受けます。

 これは「大切な人を救いたい」という思いにより生まれる行動ですが、残念ながら助言の多くが有効ではありません。なぜかというと、がんの専門知識のない一般の人がネットなどで調べた情報は科学的根拠のないことが多いからです。そもそもネットに広がる医療情報の多くが正確ではありません。

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がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。