理由を探る認知症ケア

Yさんが施設で勝手に他人の部屋に入っていく理由

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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介護者の急な入院で施設に入所したYさん

 ある日、この連載を読んでくれている介護老人保健施設(老健)の職員から、私に次のような相談がありました。

 Yさん(80代・女性)は、アルツハイマー型認知症があり、同居する90代の夫が介護をしていました。典型的な「老老介護」のケースです。あるとき、夫が買い物の帰り道で転倒して骨折し、入院を余儀なくされました。Yさんは一人で過ごせる状態ではないので、夫が回復するまで老健で過ごすことになったのです。

 その入所先となったのが、今回の相談者が働く施設でした。Yさんはここのショートステイ(短期入所生活介護)を利用したことがあり、施設の職員もYさんのことを知っていました。家族は「大きな混乱なく過ごせるだろう」と考え、この施設を選んだそうです。

ショートステイではみられなかったYさんの行動変化

 ショートステイは夫の介護疲れを解消するために、毎週末に2泊3日で利用していました。Yさんのケアマネジャーも息子さんも、今回の入所がスムーズに決まったので「ショートステイを使っていてよかったですね」と安堵(あんど)していました。

 受け入れた施設側の事情も同じで、Yさんの生活動作能力や病状などをすでに把握できていたので、夫の入院当日に受け入れを決めることができたのでした。

 そして「おおむね問題なく過ごせるだろう」という事前の予測通り、入所してから数日間はなんのトラブルもなく過ごせていました。しかし、入所から10日がたったころ、…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。