無難に生きる方法論

東京の暑さはアスリートにも危険 「限界突破」に注意を

石蔵文信・大阪大学招へい教授
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東京は梅雨明けとともに強い日差しが照りつけ、猛暑に見舞われている=東京都中央区で2021年7月16日、幾島健太郎撮影
東京は梅雨明けとともに強い日差しが照りつけ、猛暑に見舞われている=東京都中央区で2021年7月16日、幾島健太郎撮影

高齢者は暑さに「鈍感」

 先日、娘婿と久々にゴルフに行きました。炎天下でしたので、電解質の入ったスポーツドリンクを多数持ち込み、各ホールで水分補給をしていましたが、15ホール目くらいで娘婿が軽い熱中症になり、ふらつきました(それでも最後はスコアをまとめてきたのはさすがです)。私も少し体調が悪くなりましたが、水分を補給して何とか1ラウンドを終えて帰ってきました。どうも体調の変化は、若い人のほうが早く表に出てくるようです。

 私は、その2~3日後に定年退職をした仲間と炎天下でテニスの練習会をしました。平均年齢70歳前後ですが、この暑い中、午前11時~午後2時ぐらいまでテニスをしたのです。4ゲーム先取のダブルスですから、体力的な負担は比較的少ないのですが、ポイントを狙ったドロップショットや高いロブを拾うためにコートを走り回ることになり、疲れます。幸い今まで倒れた人はいません。炎天下でもむしろ元気な人が多いように思います。

 しかし、高齢者であっても鍛えれば大丈夫だと思い、安心してはいけません。私たち高齢者は、温度や外部からの刺激に対して鈍感になっています。そのため、脳が「危険だ」と判断するのが遅くなります。若い人は危険な状態に対して敏感なため、早めに体調不良に気づき、休憩や給水をしますから大事には至りません。

 温度を感知する実験では、明らかに高齢者は若者に劣ります。危険な温度になっても平気な顔をしている高齢者もいます。高温の風呂に入っているのも高齢者であることが多いです。それは「我慢強い」というよりは「鈍感」なのかもしれません。実際は、風呂場での高齢者のトラブルも少なくないのです。

 高齢者が「若いくせに根性がない」と言うことがありますが、それはセンサーの違いだと思います。鈍感な高齢者は自覚症状のないまま熱中症が進み、突然倒れて命を落とすこともあります。暑くなったこの時期は、特に注意が必要です。若い人がつらそうにしていたら、一緒に休むぐらいの余裕を持ちましょう。

「リミッター」を外すのは健康に良くない

 最近、東京オリンピックを特集するテレビ番組で、アスリートが限界まで挑戦する内容がよく放映されています。その中に、「限界まで運動すると脳が反応してそれ以上動けなくなるのが普通だが、訓練によって『リミッター』を外すことが可能になる」という話がありました。番組は、そのように頑張っている選手を称賛しているようですが、医療者から見ると大変危険なことだと思います。

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石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。