医療プレミア特集

軽度認知障害400万人 進行は抑えられるのか

永山悦子・論説委員
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 アルツハイマー型認知症の治療薬として、米国で新薬「アデュカヌマブ」が承認された。対象となるのは、症状の軽い認知症患者や軽度認知障害(MCI)と呼ばれる認知症の前段階の人たちだ。国内外では、MCIや、さらにその前の段階の人たちを対象にした研究が盛んだ。MCIとはどのような状態なのか。なぜ注目されるのか。認知症研究の専門家である東京都健康長寿医療センターの岩田淳・脳神経内科部長に聞いた。【永山悦子】

記憶障害があっても日常生活は自立

 ――アデュカヌマブは、アルツハイマー病の原因となる異常たんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」を、脳の神経細胞が大量に死んでしまう前に除去し、症状の進行を抑えるのが狙いという薬のため、症状の軽い人が投与の対象となっています。対象の人たちのうち、「MCI」とは、どのような状態の人を指すのでしょうか。

 ◆MCIは「認知機能の低下があり、認知症ではない」ということになります。記憶障害の訴えが本人や家族からあるものの日常生活は自立している人です。

 ――日本では、MCIの人はどれくらいいるのでしょうか。

 ◆約400万人いると考えられています。MCIには、アルツハイマー病だけではなく、軽いうつ病などさまざまな病気が背景にあります。また、そのまま認知症になってしまう人もあまり悪くならない人もいます。

アミロイドβの蓄積がある人が4割

 ――症状が悪化するかどうかに、何が関係しているのでしょうか。

 ◆2000年代に「アミロイドPET(陽電子放射断層撮影)」という検査法が開発され、脳内のAβの蓄積を調べられるようになりました。するとMCIの中にAβがたまっている人とたまっていない人がいることが分かったのです。さらに、Aβがたまっている人は症状が悪化しやすく、そうでない人は悪くなりにくいということも分かりました。私たちが日本人について調べたところ、同じ傾向が見られました。国内では、Aβが蓄積しているのは、MCI全体の約4割と考えられています。

 ――では、Aβが蓄積しているMCIの人は、将来認知症になる可能性が高いということなのでしょうか。

 ◆はい。何年かたつと認知症になる可能性が極めて高いといえるでしょう。逆に、Aβが蓄積していない人は認知症になる確率は低いのですが、蓄積していなくても2割程度の人は認知症に進行します。レビー小体型などアルツハイマー型以外の認知症などである可能性が考えられます。

介入の効果に関するさまざまな研究

 ――MCIになると、そのまま悪くなるのかどうか心配になると思います。「何とか認知症になるのを止められないか」と考える人も多いでしょう。Aβが蓄積している場合は止めよう…

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永山悦子

論説委員

1991年入社。和歌山支局、前橋支局、科学環境部、オピニオングループ、医療プレミア編集長など経て、2022年4月から論説委員。2010年に小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還をオーストラリアの砂漠で取材し、はやぶさ2も計画段階から追いかける。ツイッターは、はやぶさ毎日(@mai_hayabusa)。好きなものは、旅と自然と山歩きとベラスケス。お酒はそこそこ。