医療プレミア特集 フォロー

コロナ太りでひそかに高まる「血管事故」リスク

鈴木敬子・毎日新聞 医療プレミア編集部
 
 

 新型コロナウイルス禍のストレスで食べ過ぎてしまったり、自粛生活で活動量が減ったりして、「コロナ太り」に悩んでいる人は少なくない。「肥満は『隠れ血管リスク』につながる」と、生活習慣病に詳しい専門家は、コロナ太りが潜在的に動脈硬化を促進し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の危険を高めると指摘する。「コロナ太り」の危険性と、それらを予防する方法について、今年6月に開かれたメディアセミナーから報告する。

ワクチン接種後や季節の変わり目はリスクが高い

 動脈硬化のきっかけは、血管を守るうえで重要な働きを担う血管の内膜にある「血管内皮細胞」が障害されることだ。老化に加えて、高血圧、糖尿病、脂質異常症や肥満、これらが合わさった「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」、喫煙、ストレスなどによって、血管内皮機能障害は進行する。そうすると、血液中のLDL(悪玉)コレステロールが血管の壁に入り込み、酸化LDLコレステロールという「異物」に変化する。

 体の免疫細胞は異物を取り込んで排除しようとするが、酸化LDLコレステロールを取り込んだ免疫細胞が死ぬと血管の壁に沈着してプラーク(こぶ)をつくる。プラークが破れ、そこにできた血栓が大きくなると血管をふさいでしまい、心筋梗塞や脳梗塞を起こすのだ。この異物と免疫細胞の闘いを「炎症」と呼び、酸化と炎症反応によって動脈硬化が進んでいく。

 厚生労働省の統計によると、新型コロナ感染拡大前の2019年と拡大後の20年を比較すると、心筋梗塞や脳梗塞、心不全による死者はいずれも減っている。しかし、東京医科大客員講師で、池谷医院(東京都あきる野市)の池谷敏郎院長は「死亡者数の減少とは裏腹に、ひそかに『(心筋梗塞などの)血管事故』のリスクが高まっている可能性がある」と指摘する。

 自粛生活をしている間は、体の活動量が減り、血圧の急上昇にさらされることも、心拍数が上がることも少なくなっているとみられる。しか…

この記事は有料記事です。

残り1781文字(全文2597文字)

毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜支局などを経て、15年5月から医療プレミア編集部。