医療プレミア特集

新型コロナ 自宅療養で命を失わないために必要なこと

永山悦子・医療プレミア編集部兼論説室
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「『放置死』をなくせ」と在宅医療の専門家

 新型コロナウイルス感染症の患者が全国で急増し、治療に当たる全国の医療体制が逼迫(ひっぱく)しつつある。政府は、感染者が急増している地域では入院治療の対象者を制限し、症状の軽い患者は自宅療養を基本とする方針を示した。症状が軽かったとしても、感染した状態で自宅にとどまることには不安が広がる。兵庫県尼崎市で外来診療と在宅医療に取り組む長尾クリニックの長尾和宏院長は、これまでに約200人の患者の在宅療養にかかわってきた。その経験を踏まえ、自宅療養で命を失わないために必要なことを聞いた。【永山悦子】

在宅管理のコロナ患者で死亡診断書を書いた人はゼロ

 ――コロナ患者の自宅療養は、病状の急変が心配です。大阪では、今春の「第4波」で、自宅療養中の患者の死亡が相次ぎました。コロナは自宅療養での治療は難しいのではないでしょうか。

 ◆私は日々、重度の患者さんも在宅で診ています。人工呼吸器を付けている筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人もいますし、その人が肺炎を起こしたら自宅で治療しています。ですから、コロナの患者さんの在宅療養を支援することに抵抗はありません。

 私は昨年4月から約450人のコロナ患者さんを診断し、約200人のコロナ患者さんの在宅療養に関わってきました。入院が決まるまでの1日間だけ診た患者もいますし、結果的に治るまで在宅で診たケースもあります。全員に24時間いつでも連絡を取れるよう携帯番号を教えて、必要なら往診をしたり、訪問看護師に点滴などを依頼したりしました。

 約450人のコロナ患者さんの中で、結果的に亡くなった人は私の知る限り2人です。1人は90代の人で、別の医師が診断した翌朝に自宅で亡くなっているのが見つかりました。警察の検視が入ったそうです。もう1人は、私が診た翌日に入院できましたが、入院先で亡くなったそうです。保健所は届け出をした以降の患者情報は、個人情報という理由から一切教えてくれませんから、家族から聞いて知りました。結局、私が在宅管理をした約200人のコロナ患者さんでは、コロナで亡くなったという死亡診断書を書いた人は一人もいません。

コロナも「早期発見、即治療」が不可欠

 ――なぜ亡くなる人がほとんどいないのですか。軽症の人が多いからですか。

 ◆私がコロナと診断した人約450人全員に、診断直後から重症度に応じた治療を開始してきました。CT(コンピューター断層撮影)で肺炎があれば、すぐにステロイド剤やイベルメクチンを投与します。血中酸素濃度が93%以下なら、その日のうちに在宅酸素を設置してきました。コロナもがんと同じように「早期発見、即治療」が重要です。

 初診時に血中酸素濃度が60%という重症呼吸不全の方が2人いました。1週間後に入院できましたが、自宅療養中は大量のステロイド剤を投与する治療法など懸命の治療に取り組み、2人とも救命できました。入院できずにすべて自宅で治療し回復した人も約100人います。報道されている自宅療養中の死亡の多くは、医療につながることができず、治療されないまま放置された結果ではないでしょうか。

ハイリスクは高齢者、男性、肥満、喫煙者

 ――それでも、コロナはいつ重症化するか分からないと言われます。やはり自宅療養は望ましくないのではないでしょうか…

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永山悦子

医療プレミア編集部兼論説室

1991年入社。和歌山支局、前橋支局、科学環境部、オピニオングループなどを経て、2021年4月から医療プレミア編集長兼論説室。2010年に小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還をオーストラリアの砂漠で取材した。はやぶさ2も計画段階から追いかける。ツイッターは、はやぶさ毎日(@mai_hayabusa)。医療分野では、がん医療や生命科学の取材を続ける。好きなものは、旅と自然と山歩きとベラスケス。お酒はそこそこ。