現代フランス健康事情

ワクチン接種「圧力」 市民に広がる不安と違和感

竹内真里・フランス在住ライター
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ぐんぐん伸びるとうもろこし畑の間を歩く。バーベキューが好きなフランス人は、夏によく焼きとうもろこしを食べる=筆者撮影
ぐんぐん伸びるとうもろこし畑の間を歩く。バーベキューが好きなフランス人は、夏によく焼きとうもろこしを食べる=筆者撮影

 夏休み真っ最中のフランス。ニュース番組では、バカンス中の家族連れが楽しそうに浜辺で砂遊びをする様子や、東京オリンピックでのフランス選手の活躍が映し出されている。一方で、夏休み中にハイスピードで可決した法案に反対する「衛生パス抗議デモ」は、あまり報道されていない。

提示する場面が増えてきた衛生パス

 7月21日から導入が始まった「衛生パス」。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を完了しているか検査で陰性だったことを証明するものだ。イベント会場や映画館、美術・博物館、動物園、遊園地などの入り口、図書館の窓口でも衛生パスを提示するのが当たり前になってきた。ワクチン接種証明が不完全(接種後の指定日数が経過していなかったり、2回打つタイプで1回のみだったりする場合)だと、入場できない。

 「衛生パス」は最初の発表から多少の変更があったため、現時点の条件を再確認したい。以下の三つのうち、いずれかを満たす必要がある。

①ワクチン接種完了証明

・ファイザー、モデルナ、アストラゼネカの2回接種タイプは、2回接種完了から7日経過していること

・1回接種タイプのジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセン)は接種から4週間経過していること

②ウイルス陰性証明

・72時間以内のPCRまたは抗原検査の陰性証明

③新型コロナウイルスからの回復証明

・新型コロナウイルスに罹患(りかん)後、回復したことを証明する、11日以上6カ月以内のPCRまたは抗原検査の結果

 なお、12歳から17歳も、9月30日から衛生パスの対象となる。

 フランス政府の公式サイトによると、衛生パス所持者は、マスクの着用義務はないとしているが、状況によって、知事や事業主などがマスクの着用の必要性を決定できる。スーパーマーケットやショッピングモールなどでは、まだマスクを着用する人の姿が大半を占めている。

衛生パスの適用がさらに拡大

 8月5日、憲法評議会で承認された法案の一部は以下の通りだ。9日から実施が始まった。

▽医療従事者のワクチン接種の義務

▽新たに衛生パスの提示が求められる場所の追加

・カフェ、レストラン、バーなどの飲食店。店内はもちろん、外のテラス席利用も該当

・一部のショッピングモール

・病院や医療施設の受診時、見舞い訪問、高齢者施設への訪問時(救急科は除く)

・飛行機や長距離移動のバス、鉄道

 8月上旬の時点では、大勢が利用するキャンプ場や、プール併設の休暇施設なども、場所によっては「ノン、衛生パスは必要なし」と掲げているところもあった。しかし、これからは違う。導入初期は検閲が甘いかもしれないが、徐々に厳格化していくとみられる。守らなければ、サービスを利用する側も、提供する側も処罰される。衛生パスの非提示や詐欺、不正をする利用者は135ユーロ(約1万8000円)の罰金…

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竹内真里

フランス在住ライター

1978年千葉県生まれ。2000年から2002年までフランス南部マルセイユに滞在。その後、東京や香港でライターとして取材・執筆に従事。2015年に再びフランスへ。現在はリヨン市内でフランス人の夫、娘と暮らしながら現地情報を発信している。