8月15日は76回目の終戦記念日でした。日本は第二次世界大戦で300万人もの犠牲者を出しました。高度成長期以後の急速な高齢化によって、がんが急増したといっても、年間の死亡数は38万人程度。先の戦争がいかに悲惨なものだったか分かります。

 米国などの世界を相手に、なぜ無謀な戦争に突入したかをここで論じようとは思いません。ただ、トップの判断ミスが国の運命を良くも悪くも決めてしまうことは間違いないでしょう。

 今回の新型コロナウイルス感染症についても、日本の指導層の対応には納得できないものを感じます。とくに、世界第3位の経済大国であり、戦後2回目となった東京オリンピックを控えていた我が国で、ワクチンの接種が遅れたのは痛恨の極みです。

 東京五輪は異例な形のまま、幕を閉じましたが、もし接種率が欧米並みに進んでいたとすれば違った形となったはずです。「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして、完全な形で東京五輪・パラリンピックを開催する」と語った指導者の言葉がむなしく思い出されます。

 残念ながら、日本はコロナとの闘いに敗れたと認めざるをえないと思います。その上で、これ以上、犠牲を大きくしないことが大事だと言えるでしょう。

 医師の立場か…

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東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。