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増加傾向の子宮頸がん HPVワクチンの行方は?

中川 恵一・東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授
 
 

 復習になりますが、日本人の発がんの原因で最も多いのは、男性では「喫煙」で約3割、次いで「感染」が約2割、「飲酒」が1割弱です。あまり知られていませんが、女性のがんの原因のトップは「感染」で2割弱。「喫煙」は5%、「飲酒」は3%程度ですから、「感染」の重みがわかります。

 がんを引き起こす感染症としては、胃がんの原因の98%を占めるピロリ菌、肝臓がんの原因の8割程度を占める肝炎ウイルス、子宮頸(けい)がんの原因のほぼ100%を占めるヒトパピローマウイルス(HPV)などが重要です。その他、母乳から感染して白血病の原因となるウイルスもあります。

 コロナは、忘れかけていた感染症の驚異を再認識させましたが、社会の衛生化とともに、世界的には感染が原因となるがんは減少しています。実際、欧米では感染症は、がんの原因の5%程度まで減っています。

 日本でも、輸血用の血液から肝炎ウイルスを取り除いたり、注射器の使い回しをやめたりすることで、肝臓がんは10年で死亡率が半減しています。胃がんも、冷蔵庫の普及や上水道の整備などで、ピロリ菌の感染率が激減し、死亡率の減少がみられます。

 一方、一時減少していた子宮頸がんは2000年ごろより再び増加に転じています。本来減っていくはずの感染型のがんが増えているのは、先進国の中では異例の事態です。…

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東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。