医療プレミア特集

新型コロナ 2回接種後の「ブレークスルー感染」それでもワクチンが身を守る

西田佐保子・毎日新聞 医療プレミア編集部
  • 文字
  • 印刷
大阪・梅田を行き交う人たち=大阪市北区で2021年9月1日、菱田諭士撮影
大阪・梅田を行き交う人たち=大阪市北区で2021年9月1日、菱田諭士撮影

 新型コロナウイルスの流行収束の「切り札」として期待され、国内でも接種が進むワクチン。しかし、感染力の強い「デルタ株」が主流となった現在、米ファイザー製や米モデルナ製のワクチン接種を2回受け、14日たった後に感染が判明する「ブレークスルー感染」の報告が増えている。その理由や感染対策について、前編(「イベルメクチンは特効薬」「デルタ株は空気感染する」は本当か)に引き続き、米国感染症専門医、安川康介・米ジョージタウン大学内科助教(39)に聞いた。安川さんは、医師によるボランティアのプロジェクト「こびナビ」のメンバーとして、新型コロナに関する情報発信にも取り組んでいる。【聞き手・西田佐保子】

ワクチンの感染予防効果は100%ではない

 ――国内のワクチン接種回数は1億4000万回超(9月15日現在)で、10万人あたりの新規陽性者は、未接種の人が88.8人であるのに対して、1回接種の人は25.2人、2回接種した人は5.4人と低くなっています(8月18~20日)。ただし、ブレークスルー感染する人も出ています。その原因は何でしょうか。

 ◆新型コロナに対するワクチンの主な作用は、ウイルスの細胞への侵入を防ぐ「中和抗体」を作ることと、「細胞性免疫(体内にある免疫細胞の一つ『T細胞』が働いてウイルスなどの病原体を排除する免疫)」を活性化させることです。

 ブレークスルー感染を起こす原因はいろいろあり、ワクチン接種を受けた人側の要因と、ウイルス側の要因に大きく分けられると思います。例えば、ワクチンの接種後、ウイルスの細胞への侵入を防ぐ「中和抗体」が十分に体の中で作られなかった場合、ブレークスルー感染が起きます。ブレークスルー感染を起こした人は、体内の中和抗体の量が、感染しなかった人よりも低いという報告もあります。

 また免疫機能が低下している場合、例えば、がんを治療中の人や、免疫抑制剤を服用している人たちは、中和抗体が十分できにくいことが分かっています。そのため、米国では免疫機能が低下した人を対象に、3回目の接種(ブースター接種)が始まりました。

 ウイルス側の要因としては、ワクチンによって作られた中和抗体が効きにくい変異があるウイルスに対しては、ワクチンの予防効果は下がります。例えば、ファイザー製ワクチンを2回接種した後のアルファ株への発症予防効果は93.7%でしたが、デルタ株では88%と少し落ちたという臨床研究があります。

 どのようなウイルスに対しても、ワクチンの予防効果は100%ではありません。手洗い、マスク、3密(密閉・密集・密接)回避、換気などと並ぶ感染対策の一つです。感染から自分を守る大切な手段ではありますが、ワクチンが全てというわけではありません。

 ――ファイザーの1回目のワクチン接種から3カ月たった時点で、中和抗体の量が4分の1に減ったという報告がありました。接種からの時間が経過したり、デルタ株が出現したりしたことによって、ワクチンの効果は変わったのでしょうか?

 ◆抗体量が4分の1に減ったからといって、予防効果が4分の1に下がるというわけではありません。また、ワクチンの効果は抗体の量だけではなく、体内に入ってきたウイルスを排除する免疫細胞である「T細胞」の働きなども関係しますので、抗体の量だけでワクチンの効果を測ることはできません。

 昨年12月、ワクチンによる発症予防効果(症状が出ることを抑える効果)はファイザーが95%、モデルナが94.1%と非常に高いことが報告されました。その後、感染を予防する効果や、感染しても他の人にうつしにくくなる効果も報告されています。

 ただし、最近、時間の経過とともに抗体量が減少することや、流行しているウイルスがデルタ株に置き換わったことで、発症予防効果が下がってきていることが報告されています。このような報告を聞いて、「ワクチンは意味がないのか」と思う人もいるようですが、重要なことは、発症を予防する効果が薄れてきたとしても、重症化を防ぐ効果は高く保たれているということです。

 日本でも米国でも、新型コロナによって亡くなる人のほとんどがワクチンを接種していません。米疾病対策センター(CDC)のロシェル・ワレンスキ所長は今年7月、過去6カ月間に新型コロナに感染して死亡した人の99.5%はワクチンを接種していなかったことを発表しています。

 ――しかし、デルタ株によってブレークスルー感染した人は、ウイルスの排出量がワクチン未接種の人と変わらないといいます。

 ◆デルタ株以前のウイルスを対象にした研究では、ワクチンを接種した場合、感染しても他の人にうつしにくくなること…

この記事は有料記事です。

残り2089文字(全文4008文字)

西田佐保子

毎日新聞 医療プレミア編集部

にしだ・さほこ 1974年東京生まれ。 2014年11月、デジタルメディア局に配属。20年12月より現職。興味のあるテーマ:認知症、予防医療、ターミナルケア。