理由を探る認知症ケア フォロー

入院した高齢女性の食が進まなくなった本当の理由

ペホス・認知症ケアアドバイザー
 
 

おしゃべりが大好きなIさん

 Iさん(80代・女性)は、70代後半からアルツハイマー型認知症の症状が見られるようになりました。要介護1の認定を受け、日帰りのデイサービスに週2回通っていました。

 Iさんが通うデイサービスでは、体操をしたり、頭と体を同時に使う運動をしたり、音楽に合わせて歌を歌ったりするプログラムがあり、Iさんはそのプログラムがとても気に入っていました。気の合う友人も増えてきて、プログラムのない時間帯には、テーブルでおしゃべりに花を咲かせていました。

脳梗塞を患い初めて入院

 ところが、80歳を過ぎた頃に、自宅の廊下で倒れているIさんを訪ねてきたヘルパーが発見し、救急搬送されました。脳梗塞(こうそく)と診断されて、入院することになりました。会話する能力は保たれたものの、左半身にまひが残り、車いす生活となりました。要介護度も1から3に上がりました。

 同居している息子さんは昼間は働いているため、自分が帰宅するまでの間、食事やトイレが不自由になった母親が家に一人でいることが不安でした。退院前にケアマネジャーに相談し、施設に入所してもらうことも考えました。しかし、要介護度が3になったため、お気に入りだったデイサービスの利用回数を増やせることが分かりました。週5日利用する形なら家での暮らしも続けられそうだという見通しが立ち、退院して自宅に戻りました。

週5日デイサービスを利用

 Iさんは体の不自由な度合いは増しましたが、デイサービスで他の利用者とのおしゃべりを楽しむ様子は以前同様。むしろ、大好きなデイサービスに週5日も来られるようになったので「私、週5日来られるようになってうれしいわ。これからもよろしくね」と喜んで参加していました。

 ところが、…

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認知症ケアアドバイザー

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら