現代フランス健康事情

ワクチンパスと社会のひずみ、導入はよく考えて

竹内真里・フランス在住ライター
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小型ボートが停泊するフランス北部ノルマンディー地方の街、オンフルール=2019年9月14日、筆者撮影
小型ボートが停泊するフランス北部ノルマンディー地方の街、オンフルール=2019年9月14日、筆者撮影

 ふと気付けば、木々の葉も徐々に落ち始め、日差しが柔らかくなり、秋の入り口を感じるようになった。フランスの現地メディアは来年の大統領選に向けた報道が目立つ。9月18日の衛生パス(ワクチンの接種や新型コロナウイルス陰性の証明)抗議デモ参加者数は約8万人(内務省発表資料)と前週より減少したが、国内主要都市では反対運動が続いている。

大型商業施設利用時のパス不要に

 大型商業施設を利用する場合、8月16日から必要とされていた衛生パスは、9月8日以降、地域によっては解除が進んだ。現時点で導入する店は、南部4県の23のショッピングモールと、大型家具店のみとなった。わずか3週間あまりで解除となったのは、実のところは「日常生活に必要な食料品などの買い物の機会をも奪う衛生パス制度は不当だ」との訴えが裁判所に認められたことや、店の売り上げが下がるなどの影響が出たことも関係しているだろう。

 衛生パス導入後、店はかなり空いていた印象だった。例えば、衛生パス導入前のそこそこ混んでいるスーパーマーケットでは、大型カートを押しつつ、他のお客とすれ違うのも譲り合いが必要で、レジの待ち時間も長かった。パスの導入中は大型カートの操縦もスイスイ進んで楽だったが、食品の回転は悪いのか、消費期限が近い商品ばかり並んでいた。生鮮食品もしなびた野菜や色の悪くなった肉などが通常時より目立った。衣料品やアクセサリー、バッグを扱う店、眼鏡屋などの店員は手持ち無沙汰な様子だった。

 衛生パスが不要となってから、客足は戻ってきているようだ。リヨン郊外の大型商業施設内にあるメガネチェーン店の店員は「衛生パスに関係なく、私たちの対応は変わりません。店の出入り口に消毒ジェルを置き、マスク着用、お客さんが試着したメガネはトレーに置いたままにしてもらい、後で私たちが消毒して棚に戻しています。ネットで買える書籍や服と違い、メガネは対面販売が基本ですから、お客さんが来ないと始まらない。外出制限時から行政の命令に振り回されている感はあります」と話していた。

衛生パスの有無にかかわらず前向きに過ごす

 衛生パスを社会生活の場に導入した結果、新型コロナウイルスによる感染、重症化、死亡をどれぐらい防げているのかという効果を示すデータを、私は見つけることができなかった。いずれにしても、衛生パスがあろうとなかろうと、少なくとも移動そのものに制限はないので、多くの人は行きたいところに出かけ、前向きに過ごしている。

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竹内真里

フランス在住ライター

1978年千葉県生まれ。2000年から2002年までフランス南部マルセイユに滞在。その後、東京や香港でライターとして取材・執筆に従事。2015年に再びフランスへ。現在はリヨン市内でフランス人の夫、娘と暮らしながら現地情報を発信している。