百寿者に学ぶ バランス健康術!

新型コロナ 批判するより若者たちの心を知ろう

米井嘉一・同志社大学教授
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東京都が若者向けに開設する新型コロナウイルスワクチン接種会場前で、抽選券を求めて並ぶ人たち=東京都渋谷区で2021年8月29日、井口慎太郎撮影
東京都が若者向けに開設する新型コロナウイルスワクチン接種会場前で、抽選券を求めて並ぶ人たち=東京都渋谷区で2021年8月29日、井口慎太郎撮影

 新型コロナウイルスの感染対策では、ややもすると若者への批判の声が高まります。若者たちは感染状況に無頓着で迷惑な存在なのでしょうか。同志社大の米井嘉一教授は「そうではない」と言います。それはなぜでしょうか。大学でのワクチン職域接種やオンライン授業の経験から、「ウィズコロナ時代」の生き方を解説します。

「冷やし中華」のように職域接種が始まる

 日本の未来を支えるのは子どもと若者です。彼らの心を知ること、理解しようとすることは大切です。新型コロナウイルスやワクチンに対する考え方も、壮年期や老年期の者とは違っているかもしれません。

 同志社大では、大学法人の尽力によって、今年7月末からコロナワクチンの職域接種が始まりました。多くの教職員にとって急な印象が強かったようです。少しだけ早く情報をつかんだ私でさえも「えっ?」と驚きました。

 まるで「冷やし中華はじめました」のように、唐突にワクチン接種が始まったのです。

 初日は、いくつもトラブルが起きました。予約システムの不具合があり、学生が列をなし、何の説明もないまま数十分も待たされました。会場では、教職員やアルバイト学生が手伝いに従事しましたが、質問を受けても答えられなかったケースや役割分担に不具合がありました。

 しかし、数日後には状況は大幅に改善し、1日当たりの接種人数も増えました。8月2日午後は、接種会場に約500人の学生が訪れ、1回目のワクチン接種(モデルナ製でした)を終えました。4人の医師の一人として私も問診を担当しましたが、トラブルはほとんどありませんでした。

 その頃、学内ではPCR陽性者の集団発生(クラスター)報告がいくつか出ていました。「〇〇部合宿所で60人中46人がPCR陽性。ただし、全員無症状」のような報告が続き、学生たちは「コロナに感染しても無症状」「コロナなんて風邪と一緒」と思ってしまう可能性がありました。それに比べ、ワクチン接種による副反応の方が強くてつらいことを知っています。

 それでも多くの学生たちが、免疫力が弱い人たちのことを第一に考えて、ワクチン接種を受けに来てくれたのです。現在、全体の5割弱の学生が2回のワクチン接種を終えています。

「森を守る」意味を考える

 私は「公衆衛生学」の講義で、ワクチン接種を次のように説明しています。

 一人一人を木と考え、地域集団を森に例えれば、ワクチンは森を守るために必要な行政サービスです。諸説ありますが、おおむね接種率が7割を超えれば集団免疫が作られ、病気に強い森になります。

 細かいことにこだわっていては、第一歩が踏み出せず、先に進めません。ここで「木を見て森を見ず」ということわざを引用します。もちろんワクチンに高い安全性と有効性のデータがあることは前提です。

 しかし、「一本の木」が一人の人間であれば、当然、ウイルス感染のみならずワクチン接種においても安全を確保し、命を守らなければなりません。これは医師、医療機関の役目です。

 つまり「木を見て森を見ず」のことわざのようであってもいけないし、一本一本の木への心を込めた対応も欠かせないことになります。「森を保護する担当者」と「木の世話する担当者」は、互いに補完し合いながら、それぞれの役割を果たすことが求められま…

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米井嘉一

同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。