
取り外し式の義歯(入れ歯)を使っている皆さんは、きちんと入れ歯のお手入れをしていますか? 入れ歯の表面は口の中の細菌や真菌(カビ)がくっつきやすく、汚れやすくなっています。入れ歯に使われているプラスチックは、やや吸水性があり、水とのなじみがよいためです。しかも、入れ歯と粘膜が接する部分は、細菌やカビが繁殖しやすい環境になっていて、さらに汚れやすい状態になっているのです。また、部分入れ歯の場合は、残っている歯と接している箇所も汚れやすいので注意が必要です。
入れ歯を汚れたままにしておくと……
入れ歯を汚れたままにしておくと、総入れ歯の場合、「義歯性口内炎」になりやすくなります。粘膜が赤くなる病気で、上顎(うわあご)にできやすいのですが、痛くもかゆくもありません。主な原因は、粘膜と接する面(入れ歯の裏側)に繁殖したカンジダというカビの一種です。この段階で入れ歯や口の中を清潔に保つようにすれば、元の健康な粘膜に戻ります。しかし、この状態を長期間放置すると、出血や痛みが生じたり、さらには「乳頭過形成」という大小の粒々の形をした粘膜になってしまったりすることがあります。ここまで放置すると、入れ歯や口の中を清潔にしても、もう元の健康な粘膜には戻らなくなります。
部分入れ歯の場合は、総入れ歯のように入れ歯と粘膜だけではなく、残っている歯や歯茎とも接しています。そのため、部分入れ歯を汚れたままにしておくと、主に歯垢(しこう=細菌のかたまり)が原因で残っている歯が虫歯になったり、歯周病になりやすくなったりします。
虫歯や歯周病と同じく、入れ歯の汚れは口臭の原因にもなります。新型コロナウイルスの感染防止のため、マスクの着用が日常化していますが、この結果、自分の口臭に気が付き、口腔(こうくう)清掃を心がける人が増えたといわれています。一方、マスクが口臭予防になる、という話も聞き、驚いています。臭いものにふたをしても、根本的な解決にはなりません。マスクの着用をきっかけとして、口の中を清潔に保つようにしましょう。
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