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ペット飼育の規制が強まるフランス その理由は現場にあった

竹内真里・フランス在住ライター
フランスの動物愛護団体に保護された犬。見学者の気配がすると駆け寄って様子をうかがう=筆者撮影
フランスの動物愛護団体に保護された犬。見学者の気配がすると駆け寄って様子をうかがう=筆者撮影

 犬や猫を一生責任を持って飼育することは、万国共通の課題なのかもしれません。フランスではハイキングで訪れるような森に捨てられる犬が後を絶ちません。ペットの衝動買いを防ぐため、フランス政府は2024年から、ペットショップでの犬猫の販売を禁じる法律を制定しました。いったいフランスで何が起きているのか。現地のライター、竹内真里さんがフランスのペット事情を報告します。

熱しやすく冷めやすいペットへの情熱

 10月も半ばを過ぎ、いちだんと秋らしさを感じるようになった。普段からハイキング好きなフランスの人たちが、紅葉狩りや栗拾いに森へ出かけている。犬連れで楽しそうに散策を楽しむ人たち。しかし、同じ森へ来るにしても、捨てられる運命で連れて来られる犬たちもいる。フランスでは新型コロナウイルス関連の報道もいったん落ち着きを見せており、前回に続き、フランスのペット事情をお伝えしたい。

 「世界動物の日」に定められている10月4日が近くなると、フランスでは動物愛護団体が「オープンデー」という一般の市民向けのイベントを開催する。

 リヨン郊外の動物保護団体のオープンデーを訪れた。あいにくの土砂降りにもかかわらず、ずぶぬれになりながら見学に来ている人たちがいた。

 「動物たちはモノではありません」という横断幕が目に入る。収容されているのは主に犬と猫だが、圧倒的に犬の方が多い。バカンス先や森で捨てられたり、直接保護施設に持ち込まれたりするケースもある。

 敷地内には灰色のケージ小屋が建ち並ぶ。途中まで屋根があり、屋外スペースと寝床のある屋内スペースとを行き来できるようになっている。ケージごとに番号がふられ、貼ってあるメモには、名前、犬/猫種、生年月日、性格、いつから保護施設にいるのかが書かれている。年齢は不明の個体も多くいた。1歳にも満たない若い犬もいる。高齢犬やあまりにも長く施設にいる犬には、早めの引き取りを望むSOSマークがついている。

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フランス在住ライター

1978年千葉県生まれ。2000年から2002年までフランス南部マルセイユに滞在。その後、東京や香港でライターとして取材・執筆に従事。2015年に再びフランスへ。現在はリヨン市内でフランス人の夫、娘と暮らしながら現地情報を発信している。