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僕たちは「絶滅危惧種」だった 8割おじさんに聞くコロナの今後/下

永山悦子・論説委員
「感染症疫学は世の中を変えることのない退屈な学問、という印象を変えたい」と語る西浦博・京都大教授=京都市左京区の京都大で2021年10月20日、永山悦子撮影
「感染症疫学は世の中を変えることのない退屈な学問、という印象を変えたい」と語る西浦博・京都大教授=京都市左京区の京都大で2021年10月20日、永山悦子撮影

 政府の新型コロナウイルス感染症対策に欠かせないデータを提供している西浦博・京都大教授は、日本では数少ない感染症疫学の専門家だ。感染症分野は平時の注目度が低くなりがちで、専門家の少なさが課題になっている。特に深刻なのが、西浦さんが取り組む数理モデルを駆使して現状分析や予測をする理論疫学の分野だ。西浦さんは「日本では、この分野の研究者は絶滅危惧種になっていた」と話す。「絶滅」を防ぐために必要なことは何か。西浦さんの挑戦をインタビュー後編で紹介する。

「役に立たない」と言われた

 ――西浦さんが発表するデータは、コロナ第1波のときの「感染拡大を抑えるために人と人との接触を極力8割減らして」をはじめ、社会から注目され、多くの政策にも生かされてきました。ところが、日本では、西浦さんの研究室だけでデータを出している印象がありました。こんなにインパクトのある研究なのに、研究者が少ないのは不思議です。

 ◆感染症研究はパンデミック(世界的大流行)のときは注目されますし、大きな資金も投入されます。しかし、平時は先細りになって、研究者のポジションも減ります。私がロンドンで理論疫学の研究を志そうとしていたとき、日本の先輩研究者から「そんな勉強をしても、日本にポストはない」「役に立たない研究をしてどうするんだ」と言われました。それくらい、この分野への関心は薄かったのです。

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論説委員

1991年入社。和歌山支局、前橋支局、科学環境部などを経て2022年4月から現職。小惑星探査機はやぶさ、はやぶさ2を継続して取材している。著書に「はやぶさと日本人」など。好きなものは、旅と自然とベラスケス。