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3大がん治療法の一つ「手術」 そのメリットと限界

大須賀覚・がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授
 
 

 がんには、手術(外科療法)、放射線治療、薬物(化学)療法と言われる3大治療があります。がんに対して手術を行うことがあるのをご存じの方は多いでしょう。では、どのように計画し、実施されているかについては、どうでしょうか。

 手術について何も知らないと、急にがんと診断された時に不安だらけになってしまいます。今回は、もしもの時にも慌てないために、がん手術の基礎知識をご紹介します。

手術をする目的とは?

 そもそも手術をする目的はなんでしょうか?

 もちろん、それはがんを取り去るためです。手術では、がん細胞を「大きな塊」として取り去ることができます。放射線治療や薬物療法よりもよりパワフルに、多数のがん細胞を一気に摘出できます。

 がんは進行性の病気であるため、「敵」に増える時間を与えないのも治療戦略上、重要です。放射線や薬物療法はその性質上、数週間にわたって繰り返し行われることが多く、治療効果を得るまでにある程度の時間を要します。

 手術は、基本的には1日で終わります。がん細胞が増殖する期間を与えない点でも優れており、理想的と言える治療法です。

手術ではどこを摘出するのか

 がん細胞は、「浸潤(しんじゅん)」といって周囲の正常組織に広がったり、「転移」といってがんができた臓器以外にまで飛び火して病巣を作ったりすることがあります。手術する場合には、がんの塊に加え、周囲のがん細胞が広がっている部分も合わせて摘出することが重要なのはそのためです。

 手術前には画像検査を行って、がん細胞がどこまで広がっているか正確に評価します。ただ、画像検査は完璧ではなく、腫瘍がある程度の大きさになるまで成長した場合にのみ確認できるため、小さな病変の認識は一般的には難しいと言われています。

 手術を計画する際、画像検査に加えて過去の研究データも踏まえて戦略を立てるのはそのためです。同じ病気の患者さんを数百人検討した研究で「この臓器にできたがんはここに広がりやすく、そこから再発することが多い」ということが判明していることもあるので、画像ではっきり確認できなくても、あらかじめその問題となる部位を取り除くケースがあります。

 また、がん細胞は正常臓器に深く入り込んでいるため、…

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がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。