
性教育はいつから、また遅くともいつまでに始める必要があるのでしょうか?
「生殖について教えるのが性教育」だと思い込んでいる大人は「寝た子を起こすな」と言います。「性行為について知った子どもたちは、試してみたくなるものだ」と。でも近年、「世界では性教育は5歳から始めるよ」「0歳からやっている国もあるよ」などの情報も耳に入ってきませんか?
性について学べば学ぶほど「性行動に慎重になる」
小学4年生から大学生まで、さまざまな発達段階の集団を対象に、私は外部講師として性教育の授業や講演を年間120回以上行っています。大学生向けの講義の感想には驚かされます。普段、中学生や高校生に行っている性教育講演に毛が生えた程度の内容で、「今までこのようなことを学ぶ機会はなかった」「今日学ぶことができてよかった」といったコメントが寄せられるのです。
さて、冒頭の質問について、私の答えは「性教育は何歳から始めてもよいが、遅くとも10歳までには始めたい」です。
学校によっては、小学4年生向けの講演を小学6年生に行うことがあります。小学4年生までは断然、興味で目をキラキラさせながら話を聞いてくれます。しかし、10歳を超えると性に関するゆがんだ情報がすでに入っている子もいて、授業が始まる前に、「おい、今日、あの話だぜ」と男子3人でニヤニヤしている、なんてこともあります。
日本の女子の初経(初めての月経)の平均年齢は12歳ですが、体格のいい子は9~10歳ごろには初経を迎えます。ちなみに男子の精通(初めての射精)の平均年齢は13歳ごろです。
月経や射精について知らなければ、女子では血液が、男子では精液が下着について驚く子もいるでしょう。特に男子は「膿(うみ)かと思った」「自分は病気ではないか? もうすぐ死んでしまうのではないか」と本気で悩む子もいます。ですので、10歳までにはこれらの知識を伝えておきたいところです。実は、日本の学習指導要領では、小学4年生の保健の授業で男女一緒に月経と精通を学ぶことになっています。
一方で、「男女ともに15歳までに初経・精通が始まるのが一般的」だと学んだにもかかわらず、15歳までに始まらない子たちは「自分は人より遅い」と不安になってしまいます。大切なのは、…
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埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教/産婦人科医
2000年山形大学医学部医学科卒業。埼玉医科大学地域医学医療センターなどを経て、現在、埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教。埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼担。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。SAIPE 彩の国連携力育成プロジェクトメンバー、IPW実習 教員FT、SCAP(埼玉医科大学こども養育支援チーム)委員、GID医学・医療推進委員会委員。全国の小学校・中学校・高等学校にて性教育の講演を行う(2019年は135件)。著書に、「サッコ先生と! からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」(2020年、リトル・モア)がある。産婦人科専門医、社会医学専門医。