Dr.中川のがんのひみつ

食の欧米化が関係? 乳がんと前立腺がん増加の背景

中川 恵一・東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授
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 現在、日本で一番多いがんは、女性では乳がん、男性では前立腺がんです。増加のスピードが非常に速く、日本人女性の9人に1人が生涯に乳がんに罹患(りかん)します。男性でも同じく9人に1人が前立腺がんを経験します。

 どちらのがんも「性ホルモン」によって増殖する共通点があります。例えば、乳がんの場合、「エストロゲン」という女性ホルモンの刺激によって、がん細胞が増殖します。同様に、前立腺がんの細胞は男性ホルモン「テストステロン」による刺激で増殖します。

 従って、この二つのがんでは、性ホルモンの分泌を抑えることが治療につながります。実際、つい最近まで、卵巣への放射線照射や精巣の摘出(除睾<じょこう>術)が行われていました。最近では、同じことを注射によって行うようになっています。リュープリンやゾラデックス(商品名)に代表される「LH-RHアゴニスト製剤」です。

 「LH-RH」とは、脳の視床下部から分泌される「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」のこと。LH-RHが視床下部から分泌されると…

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中川 恵一

東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。