理由を探る認知症ケア

妻に認知症を疑われた夫 返事ができなかった本当の理由

ペホス・認知症ケア・コミュニケーション講師
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 妻と二人暮らしをしている90代の男性は、1年ほど前から妻に買い物に誘われても一緒に行きたがらなくなり、外出機会も減っていました。話しかけても返事がないことが多く、妻は認知症を疑うようになったそうです。しかし、通所リハビリテーションの相談員が男性と会話すると、コミュニケーションに支障はありませんでした。そこで、妻が夫に話しかける際にちょっとした工夫をしたところ、夫婦の会話が弾むようになったそうです。妻はどのような工夫をしたのでしょうか。そして、妻が夫は認知症だと思い込んでしまったわけとは――。認知症ケア・コミュニケーション講師のペホスさんが解き明かします。

団地で二人暮らしをしていたHさん

 Hさん(90代・男性)は、80代の妻と団地で二人暮らしをしていました。その団地はバス停のある道路から少し小高い場所にあり、団地内にエレベーターはあるものの、バス停から団地までの坂道が高齢者の外出にはネックになっていました。

 買い物をするスーパーは、最寄りのバス停から1区間の場所にあり、週に2回は夫婦で買い物に行っていました。そして、スーパーのイートインコーナーで近所の顔なじみの方とおしゃべりをしたり、お昼ご飯を食べたりしていました。

 ところが、Hさんは1年ほど前から、妻が買い物に誘っても一緒に行きたがらなくなりました。Hさんが買い物以外で外出することはほとんどないので、妻はこのまま閉じこもりがちになってしまうのではないかと不安を感じていました。

妻は友人に勧められて相談することに

 スーパーでよく顔を合わせていた友人に「最近、ご主人を見かけないけど、どうしているの?」と聞かれたので、妻は自分の心配な気持ちも含めて、その友人に打ち明けました。

 最近は、家でゴロゴロしていること、話しかけても返事がなかったり、…

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ペホス

認知症ケア・コミュニケーション講師

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケア・コミュニケーション講師」「認知症ケア・スーパーバイザー」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。アプロクリエイト代表。