医療プレミア特集

「助けてと言えた」コロナ下でアルコール依存に悩む人がオンラインに救われた理由

鈴木敬子・毎日新聞 医療プレミア編集部
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 アルコール依存症の疑いのある人は全国に100万人以上いるとされる。治療を受けている人はこのうち5%程度で、アルコールに関する問題は周囲に相談しにくいことが指摘されている。しかし、新型コロナウイルス流行下で「家飲み」と呼ばれる自宅での飲酒機会が増え、アルコールを原因とするさまざまな問題が起きている。

 コロナ下におけるアルコール依存症の現状と回復について知ってもらおうと、このほど自助グループの事例を紹介するオンラインのシンポジウム(主催:厚生労働省)が開かれた。自助グループは、同じ問題を経験した人たちが自主的に集まって抱えている問題を分かち合う活動に取り組み、相互に支え合いながら心身の回復へと導き合っている。

 新型コロナの流行により、対面での活動が難しくなった。しかし、自助グループの活動では「つながり」を保つことが欠かせない。アルコール依存症などの問題に取り組むNPO法人「ASK(アスク)」(東京都中央区)代表の今成知美さんや自助グループのメンバーが、コロナ下でのアルコール依存症の実態と活動の現状を発表した。

コロナ禍で「家飲み」後の飲酒運転が増加

 キリンホールディングスが今年3~4月、月1回以上飲酒している20~50代の男女計1000人に飲酒の習慣について調査した。その結果、飲酒頻度、量ともに約3割の人がコロナ禍前よりも増えた(「とても増えた」「増えた」「少し増えた」と回答した人の合計)と回答した。

 コロナ下の飲酒では、「家飲み」後の飲酒運転の増加が問題になっている。福岡県警が県内の飲酒運転検挙者の飲酒場所について、今年1~8月の調査をまとめたところ、「自宅」が40.2%に上り、「居酒屋等」の34.4%を上回ったという。酒気帯び運転で逮捕された人の中には、自宅で飲酒後に買い物のためコンビニエンスストアへ車で行ったり、自宅で深酒をして二日酔い状態でアルコールが残ったまま運転したりして検挙されるケースがあった。

 滋賀県警でも、同じ時期に検挙された人の飲酒場所は、飲食店が50件だったのに次いで、自宅が前年より11件増の48件だった。コンビニで買った酒を駐車場で飲んで運転する例もあった。

 「家飲み」とは直接関係ないが、今年6月には千葉県八街市で下校中の児童5人が大型トラックにはねられ、死傷する事故が起きた。自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた元運転手の男性被告は、公判の中で、業務中「週に2~3回飲んでいた」と供述。取引先や同僚も注意を促していたことが公判で明らかになっている。

 「家飲み」でも、身近な人には注意をしにくかったり、注意しても伝わりにくかったりするかもしれない。今成さんは八街市の事故にも触れて、「注意するだけではなく、気付いたら専門の相談機関に相談することが大事。『依存症対策全国センター』のホームページに相談先のリストがあり、本人・家族だけでなく、職場の人も相談できることを知っておいてほしい」と話した。

自助グループの種類とは

 相談窓口は主に、全国の精神保健福祉センターや保健所∇専門医療機関(一般医療機関の「飲酒量低減外来」なども)∇回復施設、カウン…

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鈴木敬子

毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜支局などを経て、15年5月から医療プレミア編集部。