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子どもへのワクチンどうする? 6歳長男が接種した米国在住医師に聞く

鈴木敬子・毎日新聞 医療プレミア編集部
 
 

 新型コロナウイルスワクチンの5~11歳の子どもへの接種が、日本でも早ければ来年2月ごろに始まる見通しとなった。すでに子どもへの接種が実施されている米ボストン在住の小児精神科医でハーバード大医学部助教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長の内田舞医師は、6歳の長男が2回のワクチン接種を受けた経験をネット交流サービス(SNS)などで発信している。子どもの接種に迷いはなかったのか。ワクチン接種後の副反応は? 接種をするなら子どもにどう伝えるべき? これらの率直な疑問について、対象年齢の子どもをもつ記者が内田医師に聞いた。

承認2日後に1回目を接種

――お子さんが2回のワクチン接種を終えたと聞きました。様子はどうでしたか?

 ◆米国では、5~11歳を対象にしたワクチン接種は11月初めに始まりました。長男は、承認後翌々日に1回目を接種、11月下旬に2回目を受けました。1回目の接種の時は、翌朝に少し腕が痛かったようですが、うんていで遊び、特に生活への影響はありませんでした。

 2回目に関しては、接種した日の夜寝ている時に顔に触れると、少しほてっている感じがしました。もしかしたら微熱があったのかもしれません。翌朝に体温を測ると平熱でしたが、「おなかの調子が悪い」と言って朝食を食べたがらなかったので、りんごジュースを飲ませたところ、飲んだジュースをそのまま嘔吐(おうと)してしまいました。しかし、戻してしまった後はすごくすっきりしたようで、“I feel so much better now!”(すっかり調子よくなった!)と晴れ晴れした表情になり、ご飯も食べ、元気に遊び、普通の一日を過ごしました。

――副反応への不安などから、お子さんに接種させることに迷いはありませんでしたか。

 ◆4500人以上が参加した臨床試験のデータでは、副反応の発生率は上の年代の人たちよりもずっと低いことが報告されていたので、私は安心して子どもに接種させることができました。臨床試験のデータによると、2回目の接種後、7日以内に起きた副反応を16~25歳と比べると、「発熱」は16~25歳が17.2%だったのに対し、5~11歳は6.5%、「倦怠(けんたい)感」は65.6%に対して39.4%、「筋肉痛」は40.8%に対して11.7%という結果で、「心筋炎」の報告は一件もありませんでした。

 この臨床試験の前にワクチン量を決めるための試験もされており、5~11歳の子どもにおいて十分な免疫反応が得られ、副反応も低く抑えられる量は、大人の3分の1が“スイートスポット”だとわかりました。そういった試験を経て決められた量のメッセンジャーRNA(mRNA)を含むワクチンだったので、大人と比べて副反応が軽いことも不思議ではないと思います。

 心筋炎を心配する声も聞きますが、米国の12歳以上のデータでは、ワクチン接種後に起きた心筋炎のほとんどが軽症でした。検査のために入院することが多いのですが、解熱鎮痛剤を処方されて翌日には退院し、2週間以内に回復するケースが大半です。心臓の機能を悪化させるような心筋炎はほぼなく、心筋炎による死亡の報告もありません。もともと心筋炎は思春期~20代前半に起こりやすいため、5~11歳の接種後の心筋炎の発生頻度は、上の年代よりも低いのではないかといわれています(※注1)。もちろん心筋炎は気を付けて観察しなければならない副反応ですが、今のところのデータでは5~11歳のお子さんの心筋炎のリスクに関しては、安心材料の方がずっと多いのが現状です。

 接種に関しては、副反応に注目しがちですが、接種しないリスクも考えなければなりません。子どもは新型コロナ感染症で重症化しにくいことが、私にとってはこの世界的大流行(パンデミック)の中での救いでした。しかし、重症化しにくいことと重症化しないことは全く違い、残念ながら感染拡大が続いたアメリカでは重症化してしまったお子さん、死亡してしまったお子さんがたくさんいらっしゃいました。

 また、感染してしまった場合、人にうつしてしまった場合、そしてパンデミックが続いてしまった場合を考えると、子どもたちに直接降りかかるリスクは多く、私は子どもたちに感染、発症、重症化を防ぐ自己防衛手段を持たせてあげたいと、強く思いました。臨床試験では、発症予防効果が5~11歳の子どもでは90.7%という高さだったので、副反応の低さだけではなく、予防効果の高さも接種を決める一因でした。

――周りの様子はどうですか。

 ◆アメリカは国内に分断があり、州によっても違いはあります。私の住んでいるボストン郊外の地域は、承認から2週間でほとんどの子どもが1回目の接種を終えるスピード感でした。私の患者さんでも接種していない子は相当まれです。承認されたのが水曜日の深夜で、翌日から接種が始まりましたが、私が担…

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毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜支局などを経て、15年5月から医療プレミア編集部。