人生なりゆき~シニアのための楽しい生き方・逝き方

口から食べられなくなったら 延命治療はいつまで?

石蔵文信・大阪大学招へい教授
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 高齢者施設で職員が入所者を殺害する――。そんな事件が起きています。もちろん職員の行為は絶対に許されるものではありません。しかし、点滴の針を刺すのも難しいほどボロボロの体になったとき、どこまで延命治療を受けるべきなのでしょうか。皆さんは考えたことがありますか? 石蔵文信・大阪大招へい教授が、このような事件の背景にある問題をひもときます。

高齢者施設で相次ぐ事件

 昨年12月、介護施設で働いていた看護師の資格を持つ職員が、入所者の点滴から空気を注入して殺害した疑いで逮捕されました。これはコンピューター断層撮影(CT)で肺に大量の空気が詰まっていることが確認されたことから判明しました。

 亡くなった高齢者は、俗に言う「空気塞栓(そくせん)症」という状態でした。動脈に空気が入ると少量でも大変なことになりますが、一般的に静脈には少々の空気が入っても、肺で何とか処理されるのでおおごとにはなりません。点滴は静脈に注入します。本来はあってはならないことではありますが、もし点滴に少量の空気が混じったとしても大きな問題にはならないことが多いようです。

 しかし、CTの画像でわかるような状態になっていたのであれば、かなりの量の空気が注入された可能性があると思われます。同じ施設で、他にも不審な死に方をした方がいらっしゃるという報道もありました。

 今回の事件の動機は分りませんが、私は老人病院でアルバイトをしていた経験があります。その経験から、施設での高齢者介護の現状を考えてみたいと思います。

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石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。