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最近お酒飲み過ぎかなと思ったら……「アルコール低減外来」が注目を集める理由

鈴木敬子・毎日新聞 医療プレミア編集部
 
 

 アルコールを巡る問題は人に相談しにくく、どこに相談したらよいか分からないという人も多い。そうした人たちに受診してもらおうと、今春、筑波大病院(茨城県つくば市)に「アルコール低減外来」が開設された。大学病院としては初の取り組みだ。ここで診察に当たるのは総合診療医。一般的なアルコール依存症の窓口である精神科には行きにくいと感じる人たちのニーズにも応える体制だ。

 どんな治療をするのか。また、治療のゴールはどこにあるのか。そんな疑問を持って、アルコール低減外来を担当する吉本尚(ひさし)准教授のもとを訪ねた。

「飲酒量低減」という治療の選択肢

 これまでアルコール依存症など飲酒に絡む問題は、精神科などの専門医療機関を受診することが多かった。しかし、実際には専門医療機関の数が限られていたり、専門医療機関への紹介に同意が得られなかったりするなどの課題があった。

 そこで、2018年にアルコール依存症に関する診療治療ガイドラインが改定され、患者にとって身近な内科などで初期のアルコール依存症患者を診察し、依存症の早期発見・治療につなげる体制を整備していくことになった。

 新しいガイドラインでは、「断酒」という目標に抵抗感をもつ患者のために、飲酒量を減らすことから始める「飲酒量の低減」という治療選択肢も加わった。

 吉本さんは、アルコールに関する問題を研究し、総合診療医として生活習慣病などの患者を診察する際に、飲酒に伴う悩みを聞く機会も多かったという。ガイドラインの改定を受け、吉本さんは19年1月、筑波大病院が連携する北茨城市民病院付属家庭医療センター(同県北茨城市)に「飲酒量低減外来」(現・アルコール低減外来)を開設した。

 意識したのは、アルコールの問題を扱う外来だとはっきり示すことだったという。

「それまでの診療の中で、『アルコールの問題を相談したい』と訴えて受診する人はほとんどいませんでした。お酒を飲んでいること自体は病気ではありません。健診で肝機能が悪いなどの指摘があれば受診してくれますが、内科や総合診療科でもアルコールの問題を相談できることを知らない患者さんが多いだろうと思ったのです。似たような分野のたばこについては、全国の内科などに1万カ所以上の『禁煙外来』があります。同じように、きちんと看板を掲げた方が患者さんも受診しやすいのではないかと思いました」

反響大きく、遠方からの問い合わせも相次ぐ

 飲酒量低減外来は精神科領域以外では初めての開設となり、メディアからも注目を集めた。病院のある北茨城市は県北部に位置する人口4万人あまりの街で、都市部からのアクセスはいいとはいえない。しかし、反響は大きく、新型コロナウイルス感染症の流行前だったこともあり、インターネットなどで外来の存在を知った患者から北海道や滋賀県などからも問い合わせがあった。現在も毎週木曜日に診察し、開設から約2年の間に80人ほどが受診した。

 来院した人から「お酒を飲み過ぎているが、(自分が行くべきなのは)精神科や心療内科ではないと思った」「内科で診てくれるところがないか探していた」という声も聞くという。…

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毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜支局などを経て、15年5月から医療プレミア編集部。