
テレビドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さん役でブレークした俳優の佐野史郎さん(66)が、多発性骨髄腫であることを公表しました。
多発性骨髄腫は「形質細胞」というリンパ球の一種が、がん化した病気です。リンパ球は白血球の一部で、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、T細胞、B細胞などに分類されます。
NK細胞は、原始的生物にも備わっている「自然免疫」を担当する免疫細胞です。がん細胞やウイルスに感染した細胞を発見すると、その細胞を攻撃し、レディーメード(既製)の免疫系とされます。
一方、T細胞とB細胞は「獲得免疫」を担当します。一度侵入した病原体の情報を記憶し、再び侵入された時にいち早く対処できるよう学習することができる特徴があり、オーダーメード(特注)の免疫系とされます。
T細胞はウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷し排除する細胞性免疫の中心となるほか、一度侵入してきた病原体を記憶し、他の免疫細胞の働きを調節する司令塔の役割も果たします。
B細胞は細菌やウイルスなどの抗原を見つけると、形質細胞に姿を変えます。形質細胞は、抗原を攻撃する抗体(免疫グロブリン)を作って感染から体を守っているのです。
しかし、形質細胞ががん化すると、…
この記事は有料記事です。
残り1153文字(全文1673文字)
東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授
1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。
連載:Dr.中川のがんのひみつ
- 前の記事
- ようやく再開、HPVワクチン
- 次の記事
- 対策は「知る」ことに尽きる