
前回(https://mainichi.jp/premier/health/articles/20220203/med/00m/100/010000c)は、2000年にスタートした成年後見制度の歴史を振り返り、財産管理を目的としていた同制度が、16年に施行された成年後見制度利用促進法により、家族の支援を受けられない認知症高齢者を支援する手段としても用いられるようになったことの問題点を指摘しました。
今回は、この制度における保護者(成年後見人等)と被保護者(被成年後見人等)の関係性は正しいのか、また今後懸念される問題は何かということについても考えてみます。
95.5%の請求が認容される現実
前回の繰り返しになりますが、成年後見制度とは、認知症など精神上の障害により自分の財産を自己管理できなくなったときなど、自分のことを自分で決められなくなったときに使われる制度です。
大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。前者は、本人の判断能力が不十分になった後に家庭裁判所に審判を申し立て、その能力程度に応じて成年後見人等(後見人、保佐人、補助人)が選ばれる制度。後者は、本人の判断能力があるうちに選んだ人(任意後見人)に与えたい権限を事前に決めて契約(任意後見契約)しておく制度です。なお、任意後見契約は、任意後見監督人(任意後見人の仕事を監督する人)の選任により効力が生じます。
後見人等の権限には、同意権・取り消し権と代理権があります。同意権・取り消し権は、被後見人等(被後見人、被保佐人、被補助人)が行う契約などの財産行為は後見人が同意しなければ発効せず、同意なしに結ばれた契約は取り消しできるというもの。代理権は、後見人が被後見人の意向にかかわらず代理で財産行為を行うことができるというものです。任意後見人の持つ権限は代理権のみです。
最高裁判所家庭局の報告によると(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/20210312koukengaikyou-r2.pdf)、後見、保佐、補助の公的後見開始審判に、任意後見監督人選任審判を加えた申立件数は20年で3万7235件、内訳は後見開始審判が70.8%、保佐開始審判が20.2%、補助開始審判7.0%、任意後見監督人選任が2.0%です。
成年後見制度が始まった00年度(当時は、年度単位で集計されていました)の申請総数は9007件(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20512001.pdf)、その後12年までは急増しますが、以降は横ばい、ないし微増です。
00年に82.7%を占めていた後見開始審判の割合は徐々に減少、12年以降は実際の申請件数でも漸減した一方、保佐開始審判、補助開始審判は徐々に増加しています。
20年には、対象となった人の64.1%が認知症、9.9%が…
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